第2話

文字数 859文字

2。
朝、トースターで焼いた食パンにハムをのせ食べやすいように3つに切る。飲み物は牛乳。毎朝これを食べていく。
父が新聞を見ながらニュースを見ている。父の朝食はご飯に味噌汁卵焼き。これも毎朝の定番だ。今考えると同じでいいじゃない、って思うけれど、当時はそんな風に感じたことはなかった。
8時10分になったら家を出る。そうするとちょうど学校に間に合うのだ。
「いってきます」
23棟から出て左の道を進む。各棟から小学生や中学生がわらわらと出てきて同じ方向へ向かっていく。
この団地にすんでいる小、中学生は同じ学校へ向かう。団地を抜けた先にある大きな道路を越えた向こうに小学校、さらに向こう側に中学校があった。
この地域の小学生が持つ鞄はリュックサックだ。転校生はほぼランドセル。ひと目で違う地域から来たと分かるのだ。
おばあちゃんから買ってもらった赤いランドセル。私には特別のもの。違ってても、これで通う。
「おはよう」
「昨日の宿題どうだった?」
ここにきて4ヶ月が過ぎた。学年が上がり3年生になった。でも、友だちはいない。
朝、大勢の小学生が通学している輪は、外から見たら同じように見えるのだろうか?
「おい」
後ろから声が聞こえたけど、まさか自分にむけてだとは思わなかった。
「おいって」
ランドセルにパスンという音と、ちょっとした振動があった。
振り替えると茶色い髪で、同じ背丈くらいの男の子がいた。赤いTシャツにジーンズ姿で、顔のそばかすが印象的なこの子を私は知っていた。3年生から同じクラスになった…
誠斗(マコト)くん」
「無視してんじゃねえよ」
「無視なんてしてない……」
彼は学年の人気者だ。賢くて、スポーツも出来て、何より絵がすごく上手かった。クラス問わず「マコ」と呼ばれている。行動も目につき、すぐに名前を覚えたのだ。
「おはよう、マホロ」
「お、おはよう……」
あいさつされたこともだけど……私の名前、知ってるんだ。
確かに新しいクラスになって自己紹介したけど、まだ誰にも呼んでもらっていなかったから、驚いた。
この日から「マコト」が私の世界に入ってきた。
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