第13話

文字数 1,423文字

13。

私の住んでる23棟の前には小さな公園がある。ブランコと砂場があるだけの小さな公園だ。この公園を挟んで向こう側には26棟、27棟と続くのだが……。
「何か用なの?」
その公園にさっき別れたはずの坂下と高橋がいた。なんでここにいるの?そして、早いじゃないの、私たちが行こうとしてた方向の反対を行ったよね?私の足ってそんな遅いかしら……?ちょっとひねくれた思いが過る。
名前を呼ばれ、振り向くと2人がいた。はじめはよくわからず、何してんの?ぐらいの気持ちだったけど、ちょっと考えると気持ち悪い。なんで私の家を知ってるの?
「真称、おまえに謝ってもらってない」
思ってもない要望。
「……え?」
「おい坂下、それってもう終わった話だろ?」
横から高橋が止めにはいる。

はあ?なに……?

「おまえが俺にえらそーにしたことは、俺、忘れてないからな」
「……えらそー?」
「それを謝れよ」
なんだそりゃ……
思わずため息が出る。
何がえらそーなのか…。何を謝ることがあるのか…。
黙って坂下と高橋を交互に見る。あの一件のことだけでイラついているのかな?なんだかそうは見えないが…。言い方もふんわりしている気がするのは、私が面倒だなって感じているからかな?
「……言いたいことはそれだけ?」
「ああ?!まだある!態度がムカつくんや!」
態度がムカつく……。はあ、まあ、そうなのかな。よく言われるのだ、実は。態度がムカつくって。行く先々で言われる。何なら親にも可愛げがないと言われる。じゃあ、教えてほしい。可愛げって何……?態度がムカつく=可愛げがないってことなのかな? うーん……
「ああそ、じゃあ関わらなきゃいいじゃない」
「なっ…?!
「…どうして絡んでくるかな……、だってムカつくんでしょ」
「おまえ…!」
坂下が真っ赤になる。
「おい、真称!もう言うな」
高橋も止めたいんだか、何なんだか、
「私に言うのおかしくない?そっちが待ち伏せしてたんでしょ?何がしたいのよ」
「わかってるよ!坂下!学校で終わったろ?!もう蒸し返すなって!」
高橋が止めようとするが、坂下の視線は私に向けられている。
「こいつ生意気だろ?!何で高橋は言わねえんだよ!」
「今日はなんもないじゃないか!行こうぜ坂下」

今日

ですけど……

もめてる二人を置いて、私は坂下に背を向けると家に帰ろうとした。その時、
「おいっ!」
驚いた高橋の声と、背中にドスッという音と、ズシンとした痛みが走った。手から本の入った手提げカバンが落ちる。
「いった……」
足下を見ると野球のボールが転がっていた。
「坂下っ!ヤバイってそれ!」
高橋の焦った声。
「おいっ!何やってんだよっ!」
別の方向からマコの声が聞こえた。
「いくぞっ、坂下!」
高橋の声に触発されるように、坂下も走って逃げた。逃げる二人を追う誠斗。
「マホロ!大丈夫?!
立ち尽くしてる私にツネトモが声をかけてくる。背中がジーンとした痛みを発している。
「うん、平気……」
「なわけないから…!ぼくんち行こう!」
「え、そこ私の家なんだけど…」
「誰もいないんでしょ!」
……そうですけど
「マコ!来て!マコト!」
「ああもう!あいつらなんなんだよ!」
戻ってきたマコは私を見る。
「なんだ、またおされたのか?」
「違うよマコト…」
ツネトモ、転がってる野球のボールを拾って見せる。
「はあ?!これぶつけたのか!」
「たぶんね…僕んち連れてく、マコは……」
「行くよ」
「マホロ、歩ける?」
心配しすぎですって、まあ……ちょっと……痛いけど……。
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