第28話

文字数 1,690文字

「いやー…さっきのは怖かったわ」
「俺は尋乃(ヒロノ)の悲鳴の方が怖かった」
「何よ!うるさかったって言いたいの?」
 言いたいも何も、そういってるだろうが…。半分あきれ顔でため息をつく春崇(ハルタカ)
 次に楽しんだライドシューティングでは、5人のりだったので、5人ずつに分かれて乗車した。最初の組が俺、尋乃(ヒロノ)(タクミ)丈臣(タケオミ)永朝(ツネトモ)。次が誠斗(マコト)玄都(ゲント)(サカエ)澄幸(スミユキ)真称(マホロ)だ。
 今、俺たちが乗り終わって、外に出てきたところだった。
 シューティングなので、宇宙船を模した船に乗り込み、そこについているシューティングガンで迫ってくる宇宙怪人を倒すゲームだ。ただ、こういったものは、座っている場所が常に移動しているため、ショットが的確に出来ず難しい。ライドしている船は、円形で、各々、外向きに座りベルトをする。その位置から打つのだ。周りは薄暗く、大きなサウンドもかかっており、臨場感も計り知れない。
 滅多なことではドキッとしないが、これはなかなか面白かった。隣に座った尋乃がパニック気味に打ち回ったのは驚いたけど、それもちょっとは予想できて……、「らしいな」と、別の意味でドキッとした。
 今頃、マコたちがライドして楽しんでるだろう。俺たちは出口から少し離れたところにあるベンチに座った。
「はぁ……どっから襲ってくるか全く分からないんじゃなくて、ちょっとだけ予想が出来るのが、余計に怖かった…」
「わかる!尋乃。僕も思わず“わーっ”て言いながら打撃っちゃったよ」
 撃つ真似をしながら匠が興奮気味に話す。
「そう言ってるけど、匠のショット率、高かったと思うけど」
「ほんと?! 当たったかどうか見る余裕なかったわ…オミってすごいな」
「動体視力のお陰。とは言っても、暗かったからな…。俺もちょい焦ったわ」
「尋乃の声が響いてたからね」
 ツネは苦笑いしながら俺を見た。
 俺とツネに挟まれて尋乃がいたから、俺たちにはダイレクトに浴びせられてたんだよな。
「だ、だって…思ったより迫力あったっていうか……」
 ま、確かに。十分楽しめた。
「さあ、マコたち来る前に次のとこどーするか決めようよ」
「そうだな、匠。ツネはさっきいなかったから希望聞けてないけど…どっかある?」
「うーん、そうだな……」
 オミ、タクミ、ツネがパークの地図を開いて見始める。
「じゃあ、私、ジュース買ってくる」
「俺も行く」
「え、そう?おごらないよ?」
「誰がたかるか!ちょっと行ってくる」
 俺は尋乃と数メートル先の自販機に歩いて向かった。
「大声だしてのどからから……」
「だろうな」
「ハルは怖くないんだねー」
「そうね。平気。てか、ここの確かに迫力あった」
「うーん…怖かったけど、これが一番好きかもな~」

 お?

 実は怖がりで、暗いのもお化けもダメな尋乃が楽しんでる。俺はこういうの、どっちかと言えば平気な方だから、一緒に楽しめそうなら他のよりこれ乗った方がいいかも…。俺の頭は瞬時に弾き出した。
「そうなん?じゃあ、もう一回乗る?」
「えー、ひとりはやだよ」
「はあ?尋乃が乗りたいなら俺も乗るよ」
「……お?」
「……え?」
 ちょっと沈黙。
 え?俺、変なこと言った?
 無言の道のり…。横……見れないんですけど。
 テクテクという自分たちの足音がやけに大きく耳に残る。周囲には賑やかなBGMとアトラクションを楽しんでいる人たちの声が入り交じって溢れてるはずなんだけど。えーっと……

 何で俺のとこだけ静かなんかな?

 自販機に到着してしまった。さすがに沈黙長すぎ。耐えれん……。
「えっと…尋乃……」
「びっっっっくりしたーーー……」

 へ?

 突然、横から発せられた言葉に、今度は俺が固まる。そして、思わず彼女の顔を見てしまった。
 横を歩いていた尋乃は、両手で顔を包むように頬に添えていて、それを見た俺はドキッとした。そうして、無防備な俺は、次の言葉をもろにくらってしまった。
「何て優しいのハル!」
「え?」
「思ってない言葉だったから驚いちゃった」
「お、おぅ……」
 そう言うと尋乃はくるりと俺に標準をあわせて、視線を合わせると、にかっと笑った。
「嬉しい。サンキュ」

 …………めちゃ…かわ……

 撃たれてしまった……。
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