第14話

文字数 1,608文字

私は、職員室にいた。
お昼休みに岡野っちから、聞きたいことがあるので、放課後、職員室へ来てくれと言われた。応援団の練習があることをいうと、それは岡野っちから断っておくという。内容が分からないながらも、何かあったのかな?と感じた。
実際、職員室に行くと、岡野っちと5年の先生ではない先生が2人いた。
えっと…一維(カズイ)のいる2年の先生でもない。
職員室内にある会議用なのか、奥の端にある大きなテーブルに6つイスがあった。そこに(いざな)われ、そのひとつに私が座り、目の前に3人の先生が座る。

威圧感がすごいのですけど……

座り心地が悪い…いや、居心地が悪いのか…。
真称(マホロ)さん、昼休みに言ったように、聞きたいことがあるんだ」
岡野っちは、いつもちょっとおどけてたり、ざっくりとした言い方だったりと、私たち子供に近い言い方をするが、今の言い方は大人の言い方だった。
一瞬にして、私の中で大きな幕が張られた。居心地とか、職員室であることとか、どうでも良くなった。
「あのね……、昨日、匠くんの家に連絡プリント届けてもらったよね。そのときに、匠くんに会えたかな?」
「岡野先生」
「え?」
「それを聞くだけならお昼休みに聞けましたよね」
「い、いや…聞きたいのはそれだけじゃないんだよ」
「そうですか。隣にいる先生は5年生の先生ではないですが、何か関係がありますか?」
「え……、まあ、そうだね。気にしなくていいんだよ、真称さんは」
それはおかしな話だ。気にすべきは先生の方だと思うけど。
「昨日は直接会えていません。誰も出てこなかったので、扉についてる郵便受けに封筒は入れました」
「そう。何時ごろに行ったのか覚えてる?」
「……正確な時間はわかりません。学校が終わって、応援団の練習をして、岡野先生に声をかけられて、封筒を渡されて、団地の棟を教えられて、それから行きました」
私の言葉は、何かおかしなものだったのだろうか?岡野先生をはじめ、名乗らなかった他2名の大人は、ちょっと驚いていた。
「他になかったら、聞きたいことがあります」
「なんだい?」
「私は、何か悪いことをしたのでしょうか?」
「え……」
「先にも言いましたけど、岡野先生以外どなたかわかりません。それに、なぜ職員室に呼ばれて、昨日、連絡プリントを渡しに行ったことを聞かれているのかも分かりません。私は、ここまでのことなら、先生に聞かれたことを答えるだけなら、みんなに聞かれても問題なかったですから、教室で良かったと思います」
私は、話したあとの大人たちの反応を見て、ああ…予想していなかったのだな、と思った。それは、3人が互いに顔を見合わせて、困ってしまったからだ。私は、また、やってしまったのだろうか…。
「もう…いいですか?」



「失礼しました」
職員室から出ると、大きな溜め息が出た。

 先生は行かないのか……

結局、匠が、連絡もなく今日も休んでいるから、昨日家を訪ねた私に話を聞きたかったようだった。でも、そんなに気になるなら自分たちで行けばいいのに。電話だってあるし、大人の方が子どもより手段があるだろうけど。

何か、無理なこともあるのかな

横にいた2人は3年生の先生だった。そう言えば、弟が3年だって言ってたっけ。
「真称ー!」
呼ばれて顔を上げると、玄都がいた。
「あ、応援団…」
「おう、今日は2組、2人とも休みだったからさ」
「うん、何かごめん」
こんな用事なら、行かなきゃ良かったなー。なんだかもやっとする。
スッキリしない表情を読み取ったのか、玄都は、ちょっと言葉を探した。
「…………しゃーないよ、用事だろ?」
「うーん……何か、応援団の練習行っといた方が良かった……」
「ええ~…じゃあ、きてほしかった…」
「うーん、なんかごめん」
「あはは、今日、何やったか教えるよ。一緒に帰ろうぜ」
「うん、いいよ。荷物取ってくる」
「一緒に行くよ」
「え…何かありがと」
「いいよ」
よかった、誰かと話せて。ひとりだとちょっとへこんだかもしれない……。
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