p86 校長VSバンク

文字数 811文字

「ソロ、もう行こう。ここは危険だ」

 たぬキノコから退却の意が伝わってくるが、校長の雷の衝撃が凄まじくて動けない。

 全身に痺れたような感覚が走り、思い通りに手足が動かない。

 直接触れたわけではないのに、すさまじい威力。

 だが、いろんな意味で新しい扉が開きそうな感覚。

 校長とバンクが自分を巡って戦おうとしているシチュエーションも良い。

「置いて行って。オレは動けない」

「そんなことできないよ」

「あと勝負の結果が気になる」

 雷よりも早くバンクが動けるとは思えないし、きっと校長の圧勝でフィナーレを迎えることになるだろう。

「たぬキノコ、許せ。オレは勝者と付き合う」

「はい? ソロも一緒に行くんだよ」

「行くって、どこへ」

「空へ」

 ソロの目の前で揺れていた(つる)が、勢いをつけて上空へと伸びた。

 螺旋状(らせんじょう)にプロトタキシーテスに絡み、気根(きこん)を爪のように食い込ませ、凄まじい勢いで木質化(もくしつか)していく。

 先陣を切って伸びた(つる)はあっという間に頂上を捕らえて根を広げ、凄まじい速度で三人を引っ張り上げた。

「そこをどけ! この天下りきのこが! 」

「コネを利用して何が悪い! 」

「頭が花だからって調子乗りやがって! 」

「悔しいか? 悔しいのか? 麗しい私が羨ましくて! カーバンクル! 」

 空が一瞬光った後、下の方から大人の小競り合いが(わず)かに聞こえた。

 そのすぐ後に轟音が鳴り響き、もう下から小競り合いは聞こえず、耳には空気を切る風の音しか入ってこなかった。

 冷たい空気に向かって突っ込んでいくものだから、とても目など開けていられない。

 鼻から喉へ冷たい風が突き刺さり、胸が苦しい。
 顔も痛い。
 BM菌でつなげてもらった首がもげそうになる。

 風向きが悪かったら、富士山の火山灰を思い切り体内に取り込んでしまっただろう。今日は風向きが東京に向いていなくて運が良かった。

 三人は(つる)に絡め取られたまま、あっという間に強風吹きすさぶプロトタキシーテスの頂上へ到着した。
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