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文字数 792文字

「バンクちゃんか・・・・・・」

「そこはサンだろ」

 冷や汗が止まらない。
 
 チビの状態の姿を思い起こすだけで、ビンタされた頬が痛みを増す。
 そして実の弟へのあの仕打ち・・・・・・。


『悪気が微塵(みじん)も無い』のが恐ろしい。


 あんな男をちょっとでもシュッとしたヤツだと思ったのが悔しい。

 顔がキャピタルの上位互換(じょういごかん)のくせに。

 チビの時の顔もイイ面構えなのが(しゃく)(さわ)る。

「きのこ化が進んでるから、マジでどこで何聞いてるかわかんねぇから気を付けろよ。おれは人間だから平気だけど」

 さっき文明の利器で平気でいられない状態にまで追い込まれただろうに。


 キャピタルはもう忘れてしまったのだろうか。


「きのこ化が進んでるから、あんなに強ぇーの? 」

「さあな。でも一般人のおれらより圧倒的に強いよな」

 たしかに強い。

 先ほどはいろんな方面でそれを見せつけられた。

 余計なことを喋り倒し、なかなか黙らないのも、きのこ化の影響なのだろうか。

 捕食者の(つる)で壁がめり込むほどの衝撃を与えられたのに、平気で動き回っていた上に、他人の治療にまで手が回るのだから。


 痛みとゲロのオンパレードの酷い治療だが。


 それに、どんな攻撃を食らわせたのか知らないが、捕食者の首を吹っ飛ばしたうえに、凄まじい速さで(つる)(ちり)に変えた。


 銃声らしい音は聞こえなかったし、いったいどうやったのか。


「軍人だもんな。でも、軍隊ってあんなデタラメな奴ばっかなのか?」

「わかんね」

「そういや、オレの面倒見てくれるって言ってたな。お前のにーちゃんオレのこと好きなのか」

「好きなやつボコす奴がこの世のどこにいるんだよ」

「この先何が起こっても、お前んちの世話にはぜってーならねえ」

「そう言うなって。おれ、ソロが来てくれたら毎日楽しいぜ。姉ちゃんもお前のこと好きだし」

 キャピタルの姉ちゃんのことを思い浮かべて、ソロは決意が揺らいだ。

 こいつの姉ちゃんはカワイイのだ。
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