p116 ソロを守るノウゼンカズラ②

文字数 975文字

 足元に向かって振り下ろそうと構えていた巨大な枝が、ノウゼンカズラの(つる)を引きちぎりながらソロの方へ向かってきた。

 ノウゼンカズラがエロ銀杏の幹に巻き付いて、間一髪で何を逃れる。

 そのままくるくると回転しながら幹に巻き付き、大様々な生物の頭骨と目を合わせながら、ソロはエロ銀杏の根元に降り立った。

「う゛っ・・・・・・」

 酔った。
 口元を抑えながら、ソロは強者たちの(むくろ)を見上げた。
 でもやっぱり一口ゲロが込み上げてきた。
 昨日貰った柿ピーのピーが消化不良で喉元まで込み上げてくる。

「ソロ、大丈夫かい? 」

「吐きたい・・・・・・」

 そっと吐いて気持ちを仕切り直し、ソロは浮島の強者たちの(むくろ)を見上げた。

 せめて白山羊のような通訳が何人かいれば、回避できた事態だったかもしれない。

 ブルーセルの時は情報漏れも危惧して、屈強さにかこつけて、わざと菌類が宿っていない選抜隊を編成したのかもしれない。

「たぬキノコ一族が素直に誰かに助けを求めていれば、ここまで状況は悪くならなかったかも」

「ごめんよ、ソロ。僕らのせいで」

「たぬキノコのせいじゃねー。たぬキノコ一族だ。ややこしいけど、たぬきノコのせいじゃねーよ」

「わかりにくいけど、わかったよ。ありがとう、ソロ」

 先ほどソロに向かってきた巨大な枝は空振りするばかりで、強風が届くのみ。根元は枝の射程距離外で、安全地帯となっていた。

「どうりで近づけないようにするわけだ。攻撃が届かないんじゃ」

「すごいよ、ソロ。そこまで到達できた生物は、今まで誰一人いなかったんだよ」

 あまりにも近すぎて、ソロがいる場所に追手の根状菌糸束を回すのも遅れている。
 もともと幹を這うようにして張り付いていた根状菌糸束は、ノウゼンカズラに本体ごと締め上げられている。

 根元に降り立ったソロを振り落とそうと、エロ銀杏はもがくが、ノウゼンカズラの(つる)に締め上げられて身動きを封じられている。

 もがけばもがくほど、体にぶら下がっていた骨が粉々に砕け、地上へに落ちて行った。

 火山灰のように降り注ぐ骨片の中で、ソロは上空を見上げた。

 (つる)が勝手に動いているのか、ソロが望んでいるのかはわからないが、とにかく、エロ銀杏をどうしたいのか、ノウゼンカズラと意見は合致(がっち)しているようだ。

「咲いて」

 ソロのお願いと共にノウゼンカズラが一斉にオレンジ色の花を咲かせ始めた。

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