p48
文字数 637文字
「送る」
送ると言ったのに、男はソロに先立って歩き出した。
タンクトップ姿になった男の広い背中が格好よく見えて、ソロはつい、素直について行ってしまった。学生服のおかげで傷口に雨が入らないし、温かい。
「何で送ってくれるんだ」
「その学ランを回収するから」
ソロは男が自分と同じ20世紀の服装をしているところが気に入った。
「オレんち遠いぜ」
男の足の長さならもっと早く歩けるはずなのに、ソロに合わせてゆっくり進んでいる。この男と雷を聞きながら歩くのは楽しい、とソロは思った。
具体的に、何がどう楽しいのかはわからないが、浮足立つような心持ちになっている。
「兄ちゃんの髪形は何で崩れないんだ? 」
「そういう種類だから」
「髪形込みでその形態なのか? 」
「そうだ」
「いいな、格好良くて」
「お前はその壊れた傘をどうするんだ? 」
空に稲光が走った。
「もう使えないだろ」
光に音が追い付く前に答えなくては。
「オレの傘だから。壊れたらオレが持って帰って捨てる」
轟音が鳴る。鳴りやんでから再び男が口を開く。
「どこで捨てようが、行きつくところは同じだろ」
「だからって捨て置いていいわけじゃない」
「こんな夜中に、なぜ出歩いていた」
「図書館で調べもの。兄ちゃんは? 」
「俺は散歩だ」
「雷、気持ちいいもんな」
「いいや。俺は夜しか動けないから」
「なんで」
「そういう種類だから」
コンビニの前に差し掛かった。人工的な明かりに男の姿が照らし出される。男は白髪で眉も白い。肌も色素が薄く人間離れした白さだ。
送ると言ったのに、男はソロに先立って歩き出した。
タンクトップ姿になった男の広い背中が格好よく見えて、ソロはつい、素直について行ってしまった。学生服のおかげで傷口に雨が入らないし、温かい。
「何で送ってくれるんだ」
「その学ランを回収するから」
ソロは男が自分と同じ20世紀の服装をしているところが気に入った。
「オレんち遠いぜ」
男の足の長さならもっと早く歩けるはずなのに、ソロに合わせてゆっくり進んでいる。この男と雷を聞きながら歩くのは楽しい、とソロは思った。
具体的に、何がどう楽しいのかはわからないが、浮足立つような心持ちになっている。
「兄ちゃんの髪形は何で崩れないんだ? 」
「そういう種類だから」
「髪形込みでその形態なのか? 」
「そうだ」
「いいな、格好良くて」
「お前はその壊れた傘をどうするんだ? 」
空に稲光が走った。
「もう使えないだろ」
光に音が追い付く前に答えなくては。
「オレの傘だから。壊れたらオレが持って帰って捨てる」
轟音が鳴る。鳴りやんでから再び男が口を開く。
「どこで捨てようが、行きつくところは同じだろ」
「だからって捨て置いていいわけじゃない」
「こんな夜中に、なぜ出歩いていた」
「図書館で調べもの。兄ちゃんは? 」
「俺は散歩だ」
「雷、気持ちいいもんな」
「いいや。俺は夜しか動けないから」
「なんで」
「そういう種類だから」
コンビニの前に差し掛かった。人工的な明かりに男の姿が照らし出される。男は白髪で眉も白い。肌も色素が薄く人間離れした白さだ。