p103 着払い

文字数 745文字

「三年に進級する単位は取得してんのかよ」

「あっ・・・・・・まあ、いっか。とにかく二年生だ。これで兄ちゃんの怒りも解けるだろ。今日中に帰るって連絡するわ」

「連絡手段なんかあんのかよ。ここ電話通じるのか? 」

「連絡手段なら郵便局があるからそこを使え。ハガキは職員から貰えるように連絡しておく。今頃昼食を取っているはずだ」

「郵便局ってどこだよ」

「ブルーセル、案内してやってくれ」

 大音量で『スタン・ハンセン~サンライズ~オーケストラ版』が流れているから熊よけにはなっていると思うのだが。

 それでもブルーセルについて熊に怯えながら森を抜けると、プレハブ小屋が立っていた。

 隣には郵便ポストらしきものが設置してある。

 プレハブ小屋の中で普通に人間ときのこが昼食を取っている。
 熊がいるというのに、なんと呑気なことか。

 しかし、中に入ってよく見るとライフルと熊用スプレー、クマよけの鈴がしっかりと備え付けてあった。

 おまけに、昼食を取っているきのこのわき腹には、えぐられた跡がバッチリ刻まれている。

 やはり、いるのだ。この浮島に熊が。

「で、どうする。なんて手紙出すんだバンクに」

「弟を返してほしければ一兆円用意しろ」

「マジか。流石だぜパャピタル」 

「行こう、これで行こう! 兄ちゃん超怒るぜ! 」

 愉快な気分になって、ソロの恐怖心も少しだけ和らいだ。

 意気揚々と職員からハガキを貰い、さっそく煽り絵と文言をしたためた。

「うっくっくく・・・・・・、兄ちゃんめ、おれを無理やり結婚させようとするからこんな目に合うんだぜ」

「こいつが届いて怒り狂う頃には、奴は忙しすぎてオレらには会えないはずだ。安心して手紙を出せ。ざまぁバンク」

 キャピタルはバンク用とファンド用にメッセージを書き、職員に託した。
 着払いで。
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