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文字数 915文字

 ガラてゃ・・・・・・?

 ドビュッシーの『アラベスク第一番』と共に、スッキリとした清涼感のある香りが鼻を(かす)めて、ソロは目覚めた。

 (こも)った強風の音に混じって、たぬキノコと寝息とキャピタルのイビキが聞こえる。

 ソロの枕元に、ドッグフードが三粒くるまれたラップが置いてあった。


 心の底からいらない。


 ソロはプロトタキシーテスがどこまで伸びたか見るために、(つる)の壁をこじ開けて外へ出た。

 月が眩しかった。
 強風に体を持って行かれないよう、(つ?)を掴みながら上空を見上げた。
 浮島にかなり近づいている。朝になれば上陸できそうだ。

「置いて行くなだの、置いて行けだの、めんどくせー夢だぜ」

 しかし、ガラテアの名が出るとは。一体何の夢だろう。
『愛の夢』を聞いていたからだろうか。

 左手の甲にいる、ガラテアの欠片(かけら)を鼻に寄せた。

 この香りのせいでガラテアの夢を見たのだろうか。

 それにしても、夜しかこの香りに再会できないなんて。

「オレもガラてゃにチューされてぇわ。校長でもいいけどさ・・・・・・。校長と、どうやってチューすんのか知らないけどさ。そもそも、どっから肉声だしてんだ校長は」

 強風に体温を奪われて、ソロは早々にノウゼンカズラのドームに避難した。

 日が昇れば今度は灼熱の暑さに見舞われるだろう。

 うまいこと浮島に会話が可能な知的生物でも居れば良いが。

「う゛、う゛う゛・・・・・・、あ、暑い・・・・・・」

 ドームの中に戻ると、むわっとした熱気の中でキャピタルがうなされていた。

 すえたたぬキノコの獣臭(じゅうしゅう)と人間の汗の(にお)いが充満している。

 ノウゼンカズラの壁をこじ開け月明かりでキャピタルを照らすと、汗だくでうなされていた。

「お前はホント健康優良児だよな」

 換気の為に、ソロは少し起きていることにした。

 壁を少しこじ開けて空気を入れ替えないと、ガラテアの香りが負けてしまう。

 強風がキャピタルの顔に直接当たるように調節する。

 『アラベスク第二番』に音楽が切り替わったところで、たぬキノコの耳が反応した。

「ソロ、おはよう」

入り込んだ外気に異変を覚えたのか、たぬキノコが起きた。

「ごめん、起こしたか。寒いか」

「ううん。なんかくさ・・・・・・暑くて起きちゃった」
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