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文字数 722文字

「やべっ、兄ちゃんだ。電話しながらこっちに向かって来てたのか」

「内密に済ませたい。大人しくこっちへ来い」

 バンクに呼ばれて振り向くキャピタルなんかとは違い、ソロはたぬキノコを抱えて何の迷いもなく逃走した。

「待てよソロ! 置いて行かないで! 」

『置いて行かないで』が、ソロの中でリフレインした。

 今朝見た後味の悪い夢の中でも、誰かが言っていた。
 誰か、ではなく、自分、だったか? 
 もしかして、あれはキャピタルだったのだろうか。

 しかし、キャピタルなんぞに構っていたらバンクに捕まってしまうので無視した。

「逃げ足の速い奴め」

「柴田少佐、内密とは」

 足止めの協力はするつもりだが、校長は大人なのでバンクの事情も聴く。

「奴らを追いながら説明しましょう」

 プロトタキシ―テスの群生地から離れた茂みに、ソロとたぬキノコは身を隠した。プロトタキシーテスの周りは見物客が多すぎて身動きが取れない。

 人が少ない場所で時間をつぶして、見物客に紛れてしれっとここから出て行った方が良い。

「命がけのかくれんぼだね」

「静かに。キャピタルに見つかる」

「鬼はキャピタルじゃなくてバンク少佐でしょ」

「そうだっけ」

 好きなきのこと一緒に隠れるのは楽しい。
 このまま時間が止まってしまえばいいのに、と思う。

「おいっ、何でおれを置いて行った」

 噂をすればキャピタルだ。暗闇の中でもシルエットがデカいから目立つ。

「見つかってしまったか・・・・・・」

「なにマジで残念そうな顔してんだ。二度と置いて行くな」

「悪かったよ」

「あんなロケットスタートで走り出すとは思わなかったぜ」

「それより、お前の彼女どんな奴なんだ」

「めんどくせぇな。なんだっていいだろ、おれの女なんか」

「やっぱり人間? 」
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