p25 リトル・マッスル

文字数 946文字

 キャピタルのあまりの取り乱しように、ソロはビックリして床でのた打ち回るのをやめた。


 別に悪いネーミングではないと思うのだが。


 キャピタルはさっきまで目も合わせようとしなかったのに、瞬間移動でもしたかのような素早さでバンクの肩を揺らしだした。

「外じゃ名前で呼べって言ったじゃん! 」

「なんで。リトル・マッスルって呼ばないと、お前、返事しないだろ」

「いいからやめろっ」

「兄ちゃんがキャピタルーって呼ぶとシカトするくせに。リトル・マッスルーって、呼ぶと、はーい、って良いお返事で来るだろ。兄ちゃんが、いつもさー、リトルマッスルーって呼ぶと。そもそも自分でリトルマッスルって呼べって言ったんだろ」


「やめぇ! それは子供ん頃のはなしだろっ」

「まだ子供だろ。今年の夏休みもリトル・マッスルって呼んだら良いお返事で」

「もうやめ、やめてくださいよぉ! 」
 
 キャピタルがバンクの膝にすがり出した。

「そういえばこないだ電話で略してL・Mって呼べって言ってたっけ。L・M、カッコいいもんな。カッコいいよ、L・Mって呼び方」
 

 服のサイズか。


「X・L、かっこいいぞぉ」

「それはおれのサイズだろっ! わざとかっ!」

「でも、やっぱり兄ちゃんはリトル・マッスルがいいな。まだリトル・マッスルでいて欲しいよ。でもな、リトル・マッスルがL・Mって呼んでほしいならL・Mって呼ぶよ」

 どうして嫌がる弟ガン無視(ムシ)で、あんなクソデカ声で連呼(れんこ)することができるのだろう。

 二人の声がイヤフォンを突き抜けて耳に襲い掛かって来る。
「あんなに小さかったリトル・マッスル・・・・・・じゃない、L・Mが、今年の夏休みの夜に、大人向け電話サービスでおねえさんと楽しそうにお話していたのを聞いて、ああ、リトルマッスル、じゃない、X・Lも大人になっちゃったんだなー、って」

「やめあああああ!」

「まだリトル・マッスルでいて欲しいとは思ったけど、それも兄ちゃんのエゴだよな」

「ちょっと黙って、喋るのやめて、な? な?」

「いつまでもリトル・マッスルじゃいられないよな、これからもっとデカくなるんだから」

 先ほどから黙る気配が微塵(みじん)も感じられない。

 やはり、先ほど自分の治療にあたった大男と同一人物のようだ、と、ソロは認識した。


それにしても、なかなか黙らない。
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