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文字数 1,204文字

ちょっと眠るとすぐコレだ。


 ソロは夢に意味など求めない性質だが、眠るたびに自分のコンプレックスに刃を立てる内容のものを見せられては疲れる。

 前の学校で似たような状況に()ったこともあり、気持ちが沈んだ。

『柴田キャピタルさん、松本ソロさん。至急、校長室まで来てください』

 校内放送で呼び出しを食らい、机に突っ伏していたキャピタルも起きた。

 半裸で眠っていたせいでバキバキに鍛え上げた腹直筋にくっきりと机の跡がついている。

 キャピタルは「腹が減ったから売店に行ってから校長室へ行く」と言い張り、遅れてやってくることになった。

 一人で校長室へ向かったソロだが、中に入るとバンクの気配が残っていて体中の菌類が震えあがった。

 あの男は捕食者寄りの人型きのこな気がする。

「ソロ、大変だったね、怖かったね。首は大丈夫かい? 」

バンクからソロの身に起こったことを聞いたたぬキノコが、心配そうに鼻をすり寄せてきた。

「お、お前、オレのこと心配してくれてんの? 」

「当たり前だろ、(つる)の捕食者にずいぶんやられたね」

「捕食者だけじゃないけどさ」

「とにかく、また生きて会えてよかった」

ソロの菌類が一斉にときめく。

「たぬキノコは優しいな」

「バンク少佐だって優しいんじゃないの? キミのこと気にかけてたみたいじゃないか。自分の身を削って治療をしたりさ。それに、なかなか言えないよ、よその子供の面倒を自分が見るだなんて」

たぬキノコからバンクを褒める言葉が出て一気に冷める。

「よその子供ビンタすんのもなかなかできないぜ」

「そうだね。早く痛みが消えるとイイね。きのこは内外傷(ないがいしょう)治癒力(ちゆりょく)が高いから、痛いのが無くなったら後は楽だよ」

「まあな。ところで、軍隊がたぬキノコに何の用があって出動してきたんだ? ツル太郎の気配を察知して軍隊が出動したんじゃなかったのか? 」

「ツルタロー? 」

(つる)の捕食者だよ。さっきオレが命名した」

「ツル太郎のことはわからない。バンク少佐もここに到着してから気配を察知したって言っていたから」

「じゃあ、軍隊とツル太郎は偶然鉢合わせしたんか」

 ツル太郎は、たしか『珍しい菌類と軍隊が現れた』と言っていた。

 珍しい菌類って、たぬキノコのことか?

 たぬキノコと軍隊が現れたから、ツル太郎はやってきた?

 でも、何のために?

 たぬキノコが可愛いくて性格が良いから、(さら)いにきたとか?

 だめだぁ。オレの頭じゃツル太郎の動機なんて、これくらいしか思いつかねぇ。

「どうしたの? ソロ」
 それに、ツル太郎の顔。あの顔、どこかで見た気がする。すごく懐かしい気が・・・・・・。

「ソロ、大丈夫? 」

「あ、うん。平気」

「僕の事情を知った校長先生が、僕の体じゃ危険だからって、適任の軍人がいるかもしれないから軍に問い合わせてみるって言ってくれたんだ。そしたら、軍がバンク少佐を寄こしてくれたんだ」

「少佐クラスの軍人を動かせるお前の事情ってなんだよ、すげぇな」
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