p60 相撲
文字数 1,064文字
今日はそんな気分ではないから早く逃げなければ。
「・・・・・・ゼ ワンスザ シップザ プ トゥスィイ イェナ ネイモザ シプ ワザビリオっティ・・・・・・ 」
部屋の向こう側からファンドの声で聞こえてくる例の鼻歌が、不気味なBGMと化する。
なんと言っているのか不明だが、キャピタルのようにハミングではない。
この法則からするに、ひょっとすると長男のバンクは元歌の歌詞を口ずさめるのかもしれない。
耳を守るため、ソロはイヤフォンを装着した。
「おれも相撲部屋に入門できなかったし・・・・・・」
「あんだって? 」
ダッシュで逃げようとしていたが、ソロはいったん保留にすることにした。ウォークマンも切る。
「何で相撲部屋の入門に失敗したんだよ。そんなん初耳だぜ」
「相撲部屋から断られたんだよ。中学卒業が入門条件です、って」
「ああ・・・・・・」
「もう15だし、身長体重も同世代の新人に比べたら足りねぇし・・・・・・」
「強い力士になれそうだけどな」
「今から順調に卒業できたとしても、その頃には18歳だ」
「20歳過ぎてから入門した奴だっているじゃねーか」
「そうだけど・・・・・・」
相撲部屋の入門条件はそれ以外にもある。
生物がRM菌と共生を開始してからずいぶん経つのに、いまだに『純・人間』が入門条件に掲げられている。
当然、今日までRM菌に感染していない力士たちは強者ぞろいで、軍の一個小隊よりも戦力があるのではないかと言われている。
ちなみに新弟子一人>フル装備の一個小隊である。
大した武力も持たない日本が、捕食者や新種の生物に対して柔軟に対応し共存を目指す姿勢を取っているのは、力士の存在があるからだと、他所の国から言われているくらいである。
何年か前にも、走行する装輪装甲車の前に飛び出した子猫を救おうとした新弟子が、装甲車をはねてしまった事故が起きた。
乗員にケガはなく他に被害も出なかったことから不問に終わったが、いかに優しさから出た行動であったとしても、使い方を誤ればその肉体は凶器となってしまうのである。
それほどまでに屈強なのである。
人気もあるから腕に覚えのある者が全国から集まるが、厳しい審査と稽古に耐え切れず脱落する者も多い。
現代の力士とは花形の職業であり、選ばれし強者でもある。
ソロは、キャピタルが相撲部屋の入門条件である『学歴』を満たしていないことを気にしており、体格だの年齢云々は、自尊心を守るためにつけたオマケのような気がした。
「他人と比べたってしょうがないだろ」と、言いかけて、ソロは口をつぐんだ。
「・・・・・・ゼ ワンスザ シップザ プ トゥスィイ イェナ ネイモザ シプ ワザビリオっティ・・・・・・ 」
部屋の向こう側からファンドの声で聞こえてくる例の鼻歌が、不気味なBGMと化する。
なんと言っているのか不明だが、キャピタルのようにハミングではない。
この法則からするに、ひょっとすると長男のバンクは元歌の歌詞を口ずさめるのかもしれない。
耳を守るため、ソロはイヤフォンを装着した。
「おれも相撲部屋に入門できなかったし・・・・・・」
「あんだって? 」
ダッシュで逃げようとしていたが、ソロはいったん保留にすることにした。ウォークマンも切る。
「何で相撲部屋の入門に失敗したんだよ。そんなん初耳だぜ」
「相撲部屋から断られたんだよ。中学卒業が入門条件です、って」
「ああ・・・・・・」
「もう15だし、身長体重も同世代の新人に比べたら足りねぇし・・・・・・」
「強い力士になれそうだけどな」
「今から順調に卒業できたとしても、その頃には18歳だ」
「20歳過ぎてから入門した奴だっているじゃねーか」
「そうだけど・・・・・・」
相撲部屋の入門条件はそれ以外にもある。
生物がRM菌と共生を開始してからずいぶん経つのに、いまだに『純・人間』が入門条件に掲げられている。
当然、今日までRM菌に感染していない力士たちは強者ぞろいで、軍の一個小隊よりも戦力があるのではないかと言われている。
ちなみに新弟子一人>フル装備の一個小隊である。
大した武力も持たない日本が、捕食者や新種の生物に対して柔軟に対応し共存を目指す姿勢を取っているのは、力士の存在があるからだと、他所の国から言われているくらいである。
何年か前にも、走行する装輪装甲車の前に飛び出した子猫を救おうとした新弟子が、装甲車をはねてしまった事故が起きた。
乗員にケガはなく他に被害も出なかったことから不問に終わったが、いかに優しさから出た行動であったとしても、使い方を誤ればその肉体は凶器となってしまうのである。
それほどまでに屈強なのである。
人気もあるから腕に覚えのある者が全国から集まるが、厳しい審査と稽古に耐え切れず脱落する者も多い。
現代の力士とは花形の職業であり、選ばれし強者でもある。
ソロは、キャピタルが相撲部屋の入門条件である『学歴』を満たしていないことを気にしており、体格だの年齢云々は、自尊心を守るためにつけたオマケのような気がした。
「他人と比べたってしょうがないだろ」と、言いかけて、ソロは口をつぐんだ。