p118 楽しい撮影会②

文字数 753文字

「ソロ、写真撮ってやるから元気出せ」

 キャピタルは白山羊から借りた翻訳デバイスのカメラ機能で、ブルーセルも入れて三人で自撮りした。

 条件反射でソロはピースサインを取ってしまったが、やっぱり中指を立てた方がカッコよかったかな、と後悔した。

「ほら、良く撮れてる。見ろ」
 
 予想はしていたが、ソロの顔面はボコボコに変形して原型を留めていなかった。
 キャピタルが良い笑顔なのが、危険人物味に溢れている。

「いい笑顔だぜクソ野郎・・・・・・」

 コイツの良い笑顔を見るたび、コンプレックスが刺激された。

「ほら、ひでぇザマだぜ。よく見ろ」

「ピァピタン・・・・・・、お前、わかってるな」

「ああ、最高だ。おれもこういうグロいの大好きなンだわ」

 でも、好きなものを分かち合えるという、代えがたい幸せがあった。

「生きて一緒に帰って、これ見ながらお前んちのじーさん食おうぜ。な? だから」



 コイツが罪悪感を抱えないように、家族のもとへ帰してやらねば。



「おれ、へいきだから」

「何が」

「かぞくはにわにはえてるだけで、いないもどうぜんだ。おまえわもうかえれ」

「やだ」

「わすれろ」

 ブルーセルが、キャピタルの肩を噛んでソロから離そうとしている。

 力づくでいいから、キャピタルを自分から引きはがして、二人で安全な場所まで逃げて欲しいとソロは思った。

「やだってば」

「ねーちゃん、しんぱいしてるぞ」

「やだっ! 」

 キャピタルから全身をぎゅッッと抱きしめられ、体のあちこちから鈍い音がした。

 朦朧(もうろう)とした意識がショックで一時的に戻り、いろんな思いが詰まった「ゴメン」が鈍い悲鳴となってソロから発せられた。

「ゴメンで済ますな。一緒に帰るっつってんだろ」

 キャピタルから力いっぱいの抱擁を受けて、物理的な損傷を負ったソロの意識はこの世からログアウトした。


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