第4話 潜入!? アサリ輸送船

文字数 1,829文字

 ゆきです。元気です!
 今日はここ、フローレスアイランドのアホーザットからバンクーバーアイランドのトッフィーノまで、インディアンのアサリ輸送船に同乗して、その模様をレポートしてみたいと思います。

 昨日アサリ超人師匠のキースに「ぼくも乗っていっていい?」と聞いたら「じゃ、10時半に」というので、今朝は10時20分くらいからアサリ集積所の前で待っていたんですが、キースが現れたのは11時くらいで、すぐ目の前の村にある輸送船がこちらの桟橋までやってきたのは、結局11時半くらいでした。

 輸送船は赤いボディーの「アイランドゴールド号」です。この間までは青いボディーの「サレンダー号」がトッフィーノ ~ アホーザット間の輸送を一手に担っていたのですが、村に新しくトレーラーハウスが何軒も運び込まれ、その土台に使うコンクリートをトッフィーノまで積みに行ったときに、誰もが二回に分けて運んだ方がいいんじゃないの? というのを聞かず、無理に全部一回ですまそうとしたため、出航間もなく“沈没”しました。
 サレンダー号、三回目だそうです、沈没したの。アホです。
 
 さて、さすがに今回の沈没でサレンダー号が再起不能に陥ってしまったため、この赤いボディーのかっこいいアイランドゴールド号の登場とあいなったわけですが、乗組員はサレンダー号と同じなので、とっても不安です。

 しかもタイミング悪く、午後からどうやらストーム(嵐)がやってくるらしいです。
 大丈夫かいな。
 一刻も早くアサリを積み込んで出航したほうがいというのに、いつもは4~5人いる手伝いのインディアン達が一人もいません。
「だってゆきが来るって言うから、俺の方では一人も雇わなかったよ」とキース。
「だってゆきが来るって言うから、俺の方でも一人も雇わなかったよ」とアイランドゴールドの操舵手。

 ア、アホですか! アホですな、あんた達は!
 二人ともじーっとぼくを見ています。ア、アホ!
 このアホども! ヌオーッ!!
 涙のアサリ輸送作戦が開始されました。

 台車に乗ったアサリバッグをキースが集積倉庫から引っ張り出します。台車ごとロープをかけ、アイランドゴールドの操舵手が船のクレーンを操作してデッキにおろします。それをデッキで待ちかまえていたぼくが、台車から降ろしてデッキ中央に積み上げていきます。

 でぇぇぇ、くそついていません。今回の漁ではみな大漁だったため、ひとつのアサリバッグが40kgを超えるもざらです。それをひとつひとつトロッコのような台車から担ぎ上げてデッキに積んでいくという、普段4人くらいでやってもかなりきついはずのパートを、今日の受け持ちはぼく一人です。おまけにストームが近づいているため急ピッチで作業を進めねばなりません。
 そして作業半ばでついに暴風が吹き荒れ始めました。

 積み込みが終わるとすぐに出航です。まだ空は晴れていますが、風が凄いです。
 平気か? ホントに平気か、この船?
 行程半ばで、ついに土砂降りの雨まで降ってきました。波にもみくちゃにされ、ぼくは船酔いでグロッギー。取材の筈が、ただの取材の筈が、なんでこんな目に?
 
 トッフィーノには無事生きてたどり着けました。うわぁ、でも気持ち悪い。
 桟橋にはすでに輸送トラックが待っていました。冷たい暴風雨吹き荒れる中、すぐに作業開始です。
 トラックからモッコ(荷物積み下ろしに使うネット)が投げおろされ、ひとつのモッコにアサリバッグを10個ばかり放り込んでは、トラックから下ろされたクレーンに引っかけます。

 キースはトラックのコンテナの中に乗り込んでしまったため、またこっちの一番ハードなところはぼく一人です。

 もおおおおおっ、いいかげんにしろよ!
 怒りが頂点に達しかけた頃、キースの甥っ子、クラムチャンピオンのタイラーが救援にやってきてくれました。
 二人で次々にモッコにアサリを放り込んでいきます。
 ハードに動ける人間が二人になれば、7~8人分に匹敵する仕事くらい出来るものです。
 あっという間に終わりました。ありがとう、タイラー。

 アイランドゴールドは、また暴風雨にもみくちゃにされながらアホーザットに帰りました。
 まぁね、いい経験だし、これくらいのお手伝いはしたっていいんだけどさ、もうちょっと計画性を持って貰いたいもんだと思いました。
 今日輸送したアサリ様は、全部で7.5トンくらいだったらしいです。
 それにしても、船酔いで、死んだ。

つづく。
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