第53話 キューティーマミーも好きだけど

文字数 1,190文字

 あーあ、ここ最近、ぱっと気持ちが昂ぶるようないいことないなぁ。つまんない。
「西田ひかるでも来ないかなあ」
 というのが、口癖になってしまいましたよ。
 でもさ、ただでさえつまんないのに、その口癖にまでたまたま泊まっていた日本人客にケチを付けられたりするので、ホント、嫌になっちゃいます。

 日本人のお客さんなんて、全体のせいぜい五パーセントくらいなもんなんですけどね、やっぱり旅行している日本人の年齢層が、へたをするとぼくより一周り半も下になっちゃうからでしょうか、
「ええ? 西田ひかるですかあ!? 西田ひかるがいいんですかあ?」
 なんて呆れたように言ってくる奴らが多いのです。
 うるせえな、いいじゃねえかよ。だいたいね、ぼくは西田ひかる本人が本当に来たらいいな、とか、そういうなんていうか、生臭いことを言ってるんじゃないの! もっとこう、なんちゅうかさ、いわゆる精神的なことを言ってるわけよ。ぱっといいことがないかなぁ、って。え? わかんない? ムウウ! 

 いま言った理屈からはズレちゃうけど、じゃあ、君にとっては誰かな? そうだな、「広末涼子でも来ないかなぁ」え、わかんない? ムウウ、じゃあね、君、彼女が鈴木さりな似だって自慢してたよね、
「鈴木さりなでも来ないかなあ」
 え、だめ? だめ、てなんで? それは許さない? いや、だからそういうことを言ってるんじゃないんだってば。とにかく許さないって? わかったわかった、じゃあさ、
「ビビアン・スーでも来ないかなぁっと」 
「それは私が許しません!」

 げ、キッチンで料理をしていた別の女の子にまで飛び火しちゃった。君たち、ぼくが挙げる名前がいまいちぴんと来ないとか言いながら、よく反応するじゃない。いや、とにかく、だから、そういう話をしてるんじゃないんだってばさ。固有名詞はどうでもいいの。精神的なことを言ってるんだっての! ん? でもなんで許さないのさ、いいじゃんべつに、鈴木さりなやビビアン・スーがここに来たって。あはは(笑い)、じゃねえよ。

 あ! あー、いかんいかん、つい興奮して、言葉使いが荒くなってしまいましたね。わたしはいい大人なんだから、そんなガキどもにあおられた程度で取り乱してはいられないのです。
「でもなんで西田ひかるなんですか?」
 (しつこいガキだな、いらいら)
「西田ひかるなら英語もぺらぺらだから、電話番だってしてもらえるじゃないですか」
「西田ひかる、電話番に使うつもりですか!? で、自分は釣りに行っちゃう? 超図々しいな。でもそれなら早見優だっていいじゃないですか、なんで西田ひかるじゃなくちゃいけないんですか」
 (べつにいいじゃねぇかよ)
「ねぇ、なんでですか?」
「…………(いらいら)」
「なんでですか、なんでなんで?」
 むううう!
「おっぱいおっきいほうがいいんだよ、うるせえな!!」

 …………シツレイシマシタ
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