第26話 天空キャッツアイ

文字数 1,638文字

 七月二十六日夜十一時四十五分くらい、珍しくそんな時間に桟橋を歩いていたら、天頂を東西に二分する強烈な白い光が!

 あれ? ここいらにパチンコ屋なんかあったっけな? あるかいな! ははは、なんてボケ突っ込み&観客笑いを思わず一人でやってしまったほど、それは超強烈な光の照射で、最初はホント、そうとうな光度のサーチライトだろうか、と疑うくらいのものでした。

 しかし光は天空を完全に二分してるし、方角からいって、今度は
「あれ? 天の川って、こんなにくっきり見えるものだったけ? はて?」
 なんて思いながら「すごいすごい」と一人喜びながら夜空を見上げていました。

 いやー、完全に頭の真上、天頂を貫いているものだから、綺麗なんだけど見上げていると首が疲れる。
「あ、でも、流れ星」
 ぴゅー。すんごい、綺麗。
 しかしこの光の帯、すんごい明るい。

 この天球を真っ黒な宝石にたとえれば、その真ん中を力強く真っ直ぐ切り裂く白い光はキャッツアイ。この天球全体をゴージャスに使い切る、宇宙サイズのキャッツアイ。
「いやん、いーわねぇ」
 思わずおねぇ言葉を使いながらも光の帯を見上げていると、星を散りばめた天球がくわぁ~んて動いてるような錯覚を起こして目がくらくらと回ってきました。

 あれ? でも、これ錯覚って言うか、いや、何か変……、いや、やっぱりこれ、どっちか動いてるんじゃないのかな? どっちかが動いてるって言うなら、それは天球上の星全体であるよりは光の帯の方でしょう。

 て、ここで「はた」と思い当たりました。
 こ、これってオーロラ?
 ……んあ! オーロラだぁ!
 いやぁ、あっそぉ、始めて見ました。

 気が付くと、光の帯は何となく全体が南へ向かって少しずつ流れて行っているようです。天頂辺りの幅や濃さが広くなったり狭くなったり薄くなったり濃くなったり。
 西の方には何となぁく赤みが差してきているよぉぉぉぉぉ、な? 気もしてきました。
 ひゃあああ、とにかく綺麗ね。

 そうだなんかお願い事、しようかな。
 うんとね、せっかくだからね、欲張った願いも良いかもね。お金、欲しいね。がっぽがっぽね。もう貧乏には疲れたもんね。
 それからそれから、でっかいサーモンも釣りたいね。それで超有名になっちゃうくらい、でーっかいのが釣りたいね。

 不老不死、永遠の命、なんてのもいいかもね。
 あ、でもそれで病気がちだったりしたら目も当てられないから、何はなくても健康かぁ。
 そうすね、金も名声も何もなくとも、一番大事なのは健康だね。健康第一! 健康一番! て、あ、ぼく、今、超貧乏で、お金はないは名声はないは、で、彼女には振られるは……、だけど歯も痛くないし、全然医者いらずの健康体かぁ。
 それって、ありがたいことだなぁ。金はなくとも健康かぁ……。いやぁ、ありがたいありがたい。

 んじゃ、べつに今のまんまでもいいってこと? えー? そうかぁ……、そうなのかな? うーん、でもやっぱりもうちょっと稼がせてよ、ね? そりゃ、健康第一は譲れないけど、ね?ね? ねね?

 なぁんて二十分くらい見てたら首が疲れたので友達にメールしに行って、十二時十五分くらいにまた見に行ったらもう消えてた。
 しかし、いやー、良かった! 初めて見た、オーロラ。
 あいらびゅあいらびゅふぉえばもー、って感じっす。
「それはオーロラ三人娘でしょ!?」(またもや一人ボケ突っ込み ← いやん、寂ちー)
 
 ※オーロラ三人娘とは、「巨人の星」に出てくるアイドルグループで、リーダーのお姉ちゃんは、自分の小指を犠牲にして星飛雄馬の左手を救い、そしてまた大リーグボール三号のヒントを飛雄馬に与えたのだ!

追伸・この原稿がカナダの雑誌に掲載されたのはたぶん2004年。この中でオーロラと表現しているのは、2016年頃から科学者の間で注目され始めた「スティーブ」という謎の発光現象で、それはオーロラとはまったく別モノであること以外、よくは分かっていない不思議自然現象らしいです。
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