第15話 インディアン式夜釣りの秘密、教えマス
文字数 1,496文字
♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……
ゆかゆか言っているだけでメロディーもなにもあったものではない、ただし声色だけはいかにもニヤけて楽しそうな歌声が聞こえてきました。
(ああ、またマックスが由香さんの名前を呼んでるな)
刑事マックスが近くにやってくるとすぐに分かります。マックスはこの間うちのお客さんとして泊まっていた由香さんという日本女性に一目惚れして、それ以来、ずーっと、昼も夜もいつでも「ゆかゆか」歌い続けているのです。
♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……
むう、確かに由香さんは非常にナイスでしたがね、ひたすらひたすら単調な「ゆかゆか」を聞かせ続けられているぼくは、すでにかなりイライラしてきていました。
「なんだよユキ、仏頂面しちゃってさ、ああ、♪ゆ~か~。釣り行こうぜ」
すでに日が落ちて真っ暗になってからいきなりやってきて、ぼくの顔にサーチライトを当てながらマックスが言いました。
しょうがないなぁ。釣り竿を持って桟橋に下りていきます。ボートにはマックスの同僚の刑事ケリー、それに警察官助手のカーティスも釣り竿を持って待っていました。どうやらここ数日間昼も夜もなくぶっ通しだった勤務が明けたので、文字通りぶっ倒れて眠ってしまう前に、皆で釣りをしに行こうぜってことのようです。
その日は霧雨の降る闇夜で、サーチライト無しでは何にも見えません。ぼくがもたもたルアーを結んでいる間に、マックスはすでに準備完了。雨合羽を着込み、右手に釣り竿、左手にサーチライトではしゃいでいます。
「なんだよユキ、おっせーな。♪ ゆ~か~、いや ♪ゆ~き~、オレが魚の釣り方ってもんを教えてやるぜ」
えっらそうにそう言うと、マックスはいきなり左手に持っていたサーチライトを海に投げ込みました。
ドボンッ!
うわっ、豪快!
それまでぺちゃくちゃゲラゲラとお喋りしていたケリーとカーティスも急にしーんとして、ゆらゆらサーチライトの明かりが沈んでいく海中を見つめています。ぼくは目がまん丸になり、次はどうなるんだろう、と期待に胸が膨らんでいきました。
(スゲー、さすがインディアンていうのは豪快な釣り方するんだなぁ)
夜釣りをする漁船は、集魚灯で魚を惹きつけて漁をしますもんね。インディアンも伝統的にそういうこと知ってるんだろうな。
♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……
沈黙を破ってマックスが歌い始めました。
「ユキ、聞いてくれよ。オレ、愛する由香ちゃんのために歌作ったんだもんね。♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……」
はぁ……。
「歌、って、それ、ただユカユカ言ってるだけじゃん。歌詞もメロディーも全然ないじゃん。だいいち、そうユカユカ言ってるけどさ、マックス、ほんとはもう由香さんの顔だって覚えてないんじゃないの?」
ちょっと意地悪を言ってみました。
「そんなことないよ。あんな綺麗な顔忘れるもんか。いいか聞いてろよ? ♪ゆ~か~、オレのゆ~か~、おお君の美しき蒼き瞳よ~」
「日本人の目は茶色なの!」
ケリーとカーティスがゲラゲラ笑い転げています。
「ところでさぁ、さっきの海にサーチライト放り込んだやつ、あれどうなったの?」
するとケリーがさらに笑い転げながら、苦しそうに言いました。
「マックス、右手と左手、間違えちゃったんだろう?」
「……うん」
へ……? そうか、マックスは右手に持った竿を振り出すつもりが、間違って左手を振ってサーチライト投げちゃったってこと? あ~……そうとうお疲れなんすねぇ。
でもあれ、警察の備品だったんじゃないの?
「テヘッ」て舌出してる場合じゃないでしょマックス?
……ぷっ、あ~あ。
ゆかゆか言っているだけでメロディーもなにもあったものではない、ただし声色だけはいかにもニヤけて楽しそうな歌声が聞こえてきました。
(ああ、またマックスが由香さんの名前を呼んでるな)
刑事マックスが近くにやってくるとすぐに分かります。マックスはこの間うちのお客さんとして泊まっていた由香さんという日本女性に一目惚れして、それ以来、ずーっと、昼も夜もいつでも「ゆかゆか」歌い続けているのです。
♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……
むう、確かに由香さんは非常にナイスでしたがね、ひたすらひたすら単調な「ゆかゆか」を聞かせ続けられているぼくは、すでにかなりイライラしてきていました。
「なんだよユキ、仏頂面しちゃってさ、ああ、♪ゆ~か~。釣り行こうぜ」
すでに日が落ちて真っ暗になってからいきなりやってきて、ぼくの顔にサーチライトを当てながらマックスが言いました。
しょうがないなぁ。釣り竿を持って桟橋に下りていきます。ボートにはマックスの同僚の刑事ケリー、それに警察官助手のカーティスも釣り竿を持って待っていました。どうやらここ数日間昼も夜もなくぶっ通しだった勤務が明けたので、文字通りぶっ倒れて眠ってしまう前に、皆で釣りをしに行こうぜってことのようです。
その日は霧雨の降る闇夜で、サーチライト無しでは何にも見えません。ぼくがもたもたルアーを結んでいる間に、マックスはすでに準備完了。雨合羽を着込み、右手に釣り竿、左手にサーチライトではしゃいでいます。
「なんだよユキ、おっせーな。♪ ゆ~か~、いや ♪ゆ~き~、オレが魚の釣り方ってもんを教えてやるぜ」
えっらそうにそう言うと、マックスはいきなり左手に持っていたサーチライトを海に投げ込みました。
ドボンッ!
うわっ、豪快!
それまでぺちゃくちゃゲラゲラとお喋りしていたケリーとカーティスも急にしーんとして、ゆらゆらサーチライトの明かりが沈んでいく海中を見つめています。ぼくは目がまん丸になり、次はどうなるんだろう、と期待に胸が膨らんでいきました。
(スゲー、さすがインディアンていうのは豪快な釣り方するんだなぁ)
夜釣りをする漁船は、集魚灯で魚を惹きつけて漁をしますもんね。インディアンも伝統的にそういうこと知ってるんだろうな。
♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……
沈黙を破ってマックスが歌い始めました。
「ユキ、聞いてくれよ。オレ、愛する由香ちゃんのために歌作ったんだもんね。♪ゆ~か~ゆ~か~ゆかゆ~か~……」
はぁ……。
「歌、って、それ、ただユカユカ言ってるだけじゃん。歌詞もメロディーも全然ないじゃん。だいいち、そうユカユカ言ってるけどさ、マックス、ほんとはもう由香さんの顔だって覚えてないんじゃないの?」
ちょっと意地悪を言ってみました。
「そんなことないよ。あんな綺麗な顔忘れるもんか。いいか聞いてろよ? ♪ゆ~か~、オレのゆ~か~、おお君の美しき蒼き瞳よ~」
「日本人の目は茶色なの!」
ケリーとカーティスがゲラゲラ笑い転げています。
「ところでさぁ、さっきの海にサーチライト放り込んだやつ、あれどうなったの?」
するとケリーがさらに笑い転げながら、苦しそうに言いました。
「マックス、右手と左手、間違えちゃったんだろう?」
「……うん」
へ……? そうか、マックスは右手に持った竿を振り出すつもりが、間違って左手を振ってサーチライト投げちゃったってこと? あ~……そうとうお疲れなんすねぇ。
でもあれ、警察の備品だったんじゃないの?
「テヘッ」て舌出してる場合じゃないでしょマックス?
……ぷっ、あ~あ。