第3話 超人達の血統《ブラッド》
文字数 2,071文字
特派員のゆきです。
2002年2月27日、今回のアサリ漁もすでに4日目、 いよいよ大詰めになってきました。
やる気のインディアン達は漁がクローズする前にと、午前4時過ぎから今日の干潮に合わせた朝の漁に出て、また午後4時過ぎにはラストスパート、二度目の干潮の潮干狩りへと、とても普段の怠け者ぶりからは想像も出来ないくらいの 猛烈な働きぶりを見せています。
しかも超人クラスは一度掘りはじめたら80kgは必ず掘ってくるので、昨日や今日などは、一日で160kg平均くらい掘っているという計算になります。
普通の熊手で潮の引いたビーチを掘っているだけなんですけどね、どーやったらそんなに掘れるのか見当もつきません。
最終日の今日は、お隣のストアの孫娘二人(11歳と2歳)も潮干狩りに行くというので、このチャンスを逃す手はありません。
もちろんぼくも同行することにしました。
11歳のアリッサは、ぼくの師匠の次女ですが、これがチャイドルにしたいくらい可愛いらしいインディアン少女。
ストアの孫娘、2歳のシャルビィは師匠の妹の子供ですが、師匠の妹は昔の写真を見ると沢口康子かと思ってしまったほど可愛いかったので、その人と白人の旦那の間に生まれたシャルビィは、これまた実に可愛い。
「ゆき、あのね、あのね、これからアサリを堀に行くのよ。熊手でね、こんな風に掘るの」
2歳のシャルビィが一生懸命説明してくれます。
うんうん、そうなの? か~わい~いねぇ。
ストアのおやじが店を閉めてビーチまで送ってくれました。
ビーチが近づいてくると「お、やってるやってる」
超人師匠をはじめそのライバル達が死にものぐるいで掘っています。
分かっちゃいたけど、速いなぁ。
ビーチに飛び降りると、はやくもアリッサは砂利ビーチを一生懸命掘りはじめました。
おお、やる気満々、さすが超人師匠の子。
ところがシャルビィはビーチについてまだ5分もしないうちにぐずり始めました。
「帰る」
ええ?
「ゆきと」
えええ!?
「ゆきと一緒に帰る、うわあああああああぁんん!」
そ、そうですか。
そうですね。
おやじも店があるから帰ると言うし、おやじに帰られちゃ今度はいったいいつになったら家に帰れるか分かったもんじゃありません。
どっちみち漁に参加するわけにもいかないので、アリッサだけ超人達の中に置き去りにして戻ってくることにしました。
でもせっかくビーチまで来たのだから、すかさずひょひょひょいっと15cm超級の牡蠣を10個くらい拾って、さらに岩場に駆け上がり、この間インディアンが食べていた貝系生物「カイトゥン」を5~6個ナイフではがし取りました。
カイトゥンの黒い表皮の下はキャタピラのような装甲板(骨)に覆われており、風の谷のナウシカに出てくる「オオム」に黒い皮をかぶせたような感じです。(ヒザラガイの一種ですね)
ホントはもう一種類の不思議貝系生物のGETをねらってたんですが、子供に泣かれると困るので今回は諦めます。
帰り道ではイルカの群がボートの後ろを着いてきました。
むこうの岩場ではラッコがぷかぷか浮いています。
いいね、いいねぇ。ホントいいね、ここは。
さて、どっぷりと日も暮れて、インディアン達が次々とアサリ集積所に集結しだしました。
戻ってくるボートはどれも大量のアサリでそうとうに沈み込んで見えます。
これは! どの人も凄い大漁ですな。
次々と巨大なアサリバッグが運び込まれて計量が始まりました。
はい153パウンド(69kg)、次191パウンド(86.5kg)、次187パウンド(85kg)……。
ひゃあああ、みんな掘るねぇ。
別の集積所からもニュースが入ってきました。
おやじの孫の一人、シャルビィの兄、タイラー(15歳)の今夕の成績は 210パウンド(95kg)。間違いなく彼はこの海域のアサリチャンピオンです。
集積所で計量が済むと、重量に応じたお金がその場で支払われます。
普段あまりしゃべりたがらないようなタイプの人たちでさえも、このときばかりは見違えるように興奮し、にこにことはしゃいで上機嫌になるので、そばにいるこちらまで楽しくなっちゃいます。
労働のあとの笑顔は、万国共通で素晴らしいですね!
わいわいと大騒ぎしている大人達にまぎれて可愛らしいアリッサが見え隠れしていました。
「アリッサは今日はどのくらい掘ったのかな?」
「 ……、ぼそぼそ6」
恥ずかしそうに下を向いて、小さな声で答えました。
「6パウンド?」 2.5kgくらい?
わぁ、か~わい~。
「ぼそぼそ6」
え? 26パウンド? 26パウンド(12kg)も掘ったの? 凄い!
「違う! 46パウンドって言ってんの!」(怒)
ぶふう!
そうですか。27kgも掘ったのね。さすが超人の血を引く娘。いやいや、どうも、失礼しました。
明日はアサリ輸送船に潜入!
(どうでもいいけど、こんなことやってるヒマがあるっちゅうのは、これまた問題では? ハミングバードホステルよ、大丈夫か?)
つづく。
2002年2月27日、今回のアサリ漁もすでに4日目、 いよいよ大詰めになってきました。
やる気のインディアン達は漁がクローズする前にと、午前4時過ぎから今日の干潮に合わせた朝の漁に出て、また午後4時過ぎにはラストスパート、二度目の干潮の潮干狩りへと、とても普段の怠け者ぶりからは想像も出来ないくらいの 猛烈な働きぶりを見せています。
しかも超人クラスは一度掘りはじめたら80kgは必ず掘ってくるので、昨日や今日などは、一日で160kg平均くらい掘っているという計算になります。
普通の熊手で潮の引いたビーチを掘っているだけなんですけどね、どーやったらそんなに掘れるのか見当もつきません。
最終日の今日は、お隣のストアの孫娘二人(11歳と2歳)も潮干狩りに行くというので、このチャンスを逃す手はありません。
もちろんぼくも同行することにしました。
11歳のアリッサは、ぼくの師匠の次女ですが、これがチャイドルにしたいくらい可愛いらしいインディアン少女。
ストアの孫娘、2歳のシャルビィは師匠の妹の子供ですが、師匠の妹は昔の写真を見ると沢口康子かと思ってしまったほど可愛いかったので、その人と白人の旦那の間に生まれたシャルビィは、これまた実に可愛い。
「ゆき、あのね、あのね、これからアサリを堀に行くのよ。熊手でね、こんな風に掘るの」
2歳のシャルビィが一生懸命説明してくれます。
うんうん、そうなの? か~わい~いねぇ。
ストアのおやじが店を閉めてビーチまで送ってくれました。
ビーチが近づいてくると「お、やってるやってる」
超人師匠をはじめそのライバル達が死にものぐるいで掘っています。
分かっちゃいたけど、速いなぁ。
ビーチに飛び降りると、はやくもアリッサは砂利ビーチを一生懸命掘りはじめました。
おお、やる気満々、さすが超人師匠の子。
ところがシャルビィはビーチについてまだ5分もしないうちにぐずり始めました。
「帰る」
ええ?
「ゆきと」
えええ!?
「ゆきと一緒に帰る、うわあああああああぁんん!」
そ、そうですか。
そうですね。
おやじも店があるから帰ると言うし、おやじに帰られちゃ今度はいったいいつになったら家に帰れるか分かったもんじゃありません。
どっちみち漁に参加するわけにもいかないので、アリッサだけ超人達の中に置き去りにして戻ってくることにしました。
でもせっかくビーチまで来たのだから、すかさずひょひょひょいっと15cm超級の牡蠣を10個くらい拾って、さらに岩場に駆け上がり、この間インディアンが食べていた貝系生物「カイトゥン」を5~6個ナイフではがし取りました。
カイトゥンの黒い表皮の下はキャタピラのような装甲板(骨)に覆われており、風の谷のナウシカに出てくる「オオム」に黒い皮をかぶせたような感じです。(ヒザラガイの一種ですね)
ホントはもう一種類の不思議貝系生物のGETをねらってたんですが、子供に泣かれると困るので今回は諦めます。
帰り道ではイルカの群がボートの後ろを着いてきました。
むこうの岩場ではラッコがぷかぷか浮いています。
いいね、いいねぇ。ホントいいね、ここは。
さて、どっぷりと日も暮れて、インディアン達が次々とアサリ集積所に集結しだしました。
戻ってくるボートはどれも大量のアサリでそうとうに沈み込んで見えます。
これは! どの人も凄い大漁ですな。
次々と巨大なアサリバッグが運び込まれて計量が始まりました。
はい153パウンド(69kg)、次191パウンド(86.5kg)、次187パウンド(85kg)……。
ひゃあああ、みんな掘るねぇ。
別の集積所からもニュースが入ってきました。
おやじの孫の一人、シャルビィの兄、タイラー(15歳)の今夕の成績は 210パウンド(95kg)。間違いなく彼はこの海域のアサリチャンピオンです。
集積所で計量が済むと、重量に応じたお金がその場で支払われます。
普段あまりしゃべりたがらないようなタイプの人たちでさえも、このときばかりは見違えるように興奮し、にこにことはしゃいで上機嫌になるので、そばにいるこちらまで楽しくなっちゃいます。
労働のあとの笑顔は、万国共通で素晴らしいですね!
わいわいと大騒ぎしている大人達にまぎれて可愛らしいアリッサが見え隠れしていました。
「アリッサは今日はどのくらい掘ったのかな?」
「 ……、ぼそぼそ6」
恥ずかしそうに下を向いて、小さな声で答えました。
「6パウンド?」 2.5kgくらい?
わぁ、か~わい~。
「ぼそぼそ6」
え? 26パウンド? 26パウンド(12kg)も掘ったの? 凄い!
「違う! 46パウンドって言ってんの!」(怒)
ぶふう!
そうですか。27kgも掘ったのね。さすが超人の血を引く娘。いやいや、どうも、失礼しました。
明日はアサリ輸送船に潜入!
(どうでもいいけど、こんなことやってるヒマがあるっちゅうのは、これまた問題では? ハミングバードホステルよ、大丈夫か?)
つづく。