第2話 発掘! 幻の超人アイテム

文字数 1,379文字

 特派員のゆきです。
 前回、次はインディアン村のアサリ漁をレポートすると予告したのですが、 何かと邪魔が入ってなかなか思うように取材ができません。

  2002/02/26、今日は作戦を変更して、アサリ集積所に潜入して 山のようなアサリ様の写真を撮ってやろう、 と誰もいない日中を見計らって抜き足差し足、 倉庫のほうに近づいていきました。

 そーっとねそぉ~っと……。
 えへへ、えへへへ。

 ところが、倉庫までの短い道のりの途中で、スパゲティーミートソースの無惨な残飯が 大量に投棄してあるのを発見。

 そこへ不思議な姿形をしたアヒル(のようなもの)がベタベタベタ! と走ってきて、ガフガフいいながら 残飯に食らいつきはじめたではありませんか。
 思わず見とれてしまいました。

 な、何なのか、この生物は?
 でもアヒルの奥さんたちを押さえ込んで、無理やり交尾している姿をよく見かけるので、きっとアヒルには違いないんだと思います。(後に、南米産のアヒル、バリケンだと判明しました)

 そいつは頭にある可動式のモヒカンとさかを上下させてぼくを威嚇したりするので、やはりインディアンの血が混じっているのだろうかと疑いながら写真を撮っていると!
 ああ! こ、これは?
 
 スパゲティ-に埋もれるように見え隠れしている錆びた鉄くず。
 今まで視界に入っていても全然気にもとめていなかった変わった形をした熊手。
 どけどけどけ!
 インディアンダックを蹴散らして残飯の中から掴みだしたその漁具。

 それは! まぎれもなく!
「こ、これは貝巻」

 鉄製のカニかごかなんかを形を整えたうえで 鉄筋を曲げて作った輪に溶接。それに農耕用のレーキかなんかの歯を溶接して、柄につながる部分は、やはり農耕用のフォークを加工した物を溶接したらしい。

 す、すごい。
 こいつはすごい。

 鉄筋の輪の部分の上部には、ロープを使って誰かに引っ張らせるための結び場所らしき物があります。そのごつさといい、硬い岩砂利ビーチを二人がかりでやっつけてやろう、という工夫が随所に見られる逸品です。

 こんな物を遙か昔に自作するとは、タダモノデナイ!
 そこへお隣のジェネラルストアのおやじがやってきました。

「ゆき、お前そんな鉄くず掘り出して何やってるんだ」
ああっ、いいところへ。
「おじさん、こ、これはなぜこんなところにあるのですか? いったいだれが」
「ああ、これは俺が作った。1965年か66年くらいだな」
「こ、これは! アサリを掘るための漁具ですね?」

「これか? いや、これはこうしてちんちんを掻くための物だぞ」
 おやじはごつい貝巻きを股間に当てて、がしがしと掻くまねを始めました。
 そのアイディアが自分でよほど気に入ったらしく、ストアに客がやってくるたび、貝巻きで股間を掻いてはゲラゲラ笑っています。

「おじさん、それは日本ではアサリを掘るときなんかに使うスペシャル漁具なんですけど、それを37年も前に作ったなんて、自分で考えたんですか?」
「なに、俺のアイディアを盗んだやつがいるのか、けしからん。一般人は右手を使わねばイカン。右手だ」

 このおやじこそ、インディアン潮干狩り超人師匠の父親であり、43年前にこの地にやってきて、この界隈の既存のビジネスのほとんどを一人で立ち上げたという、伝説のスーパー白人おやじなのでした。

 つづく。
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