第8話 シャチの親子接近大遭遇
文字数 1,800文字
はい、特派員のゆきです。
2002年4月19日、今日は超エキサイティングなことがありました。
「はや~、春だというのにまだお客が一人も来ないよ」と呆然としていると、午前9時頃、ストアのおやじから電話がかかってきました。
「ゆき、無線聞いてみろ」
えー、朝からなんだヨン。
3年前、村のインディアンからなけなしの100ドルをはたいて買ったicomのVHF無線機のスイッチを入れると、
「巨大なシャチが2頭、アホーザット村の正面の海を移動中、ピーガガガ」 !!!!!ッ」
カメラをひっつかんで飛び出しました。
おやじに貰ったボロボロのチビ舟を修理しホンダの8馬力エンジンを搭載したぼくの愛船に桟橋からジャーンプ!
瞬時にエンジンスタート!
頭の中では「♪ルパン・ザ・サ~ァド」、とすっかりルパン三世。
ストアの2階からおやじが「シャチは3頭に増えたぞ」と叫ぶ声を背にフルスロットルですっ飛ばします。
おおおおお! たった8馬力といえど、ボートが小さいので、そうとうなスピードです。
ますます気分は大盛り上がりです!
しかし一方で、冷静沈着なもう一人のぼくが、燃料が残り少ないぞ、と計算しています。商売のホステルに宿泊客がぜんぜん来ないんで、ずいぶんと補給していなかったんです。
この調子ですっ飛ばしたら、帰りの分はやばいかも。
ええい、ままよ。
ここでスロットルの手をゆるめるわけにはいかないのじゃあ!
入り江を回り込んで村の正面が見えてきました。
「どこだ?」
沖合に一隻、船がゆっくり航行しています。と、その前方、激しく潮が噴き上がりました。続いて、垂直にいきり立った巨大な背鰭が。
で、でかい! 遙か、まだ1kmくらいはあるかも知れないというのに、この距離でもありありと分かる巨大さです。
うわー、でっっっかいっ! しかし、まだまだ距離がありすぎます。
ガス欠寸前であの巨大なシャチを追うのは無理か……。
痛恨の思いでスロットルをゆるめて唇をかみました。
と、そこへ、背後からボートのエンジン音が響いてきました。アサリ超人師匠キースが、暇つぶしのボートドライブに通りかかったのです。
ナイス、キース、いいぞ、キース。
その場で碇をうち、文字通り自分のボートを乗り捨てて、キースの船に飛び移りました。
「なんだ、どうした、ゆき?」
「シャチ、シャチ、ほらあそこ」
再び潮が噴き上がって巨大な背鰭が浮上します。
「お、おおお、でぇっかいなぁ」
キースでさえも驚いています。
「そうだ、子供達を連れてこよう」
え? えええ? 今すぐ追ってくれないの?
あ、あああ、行っちゃうよぅ。
自分のボートを乗り捨てたかいもなく、キースはそのまま子供達を迎えに家に帰っちゃいました。
あー、まー、しょうがないや。諦めました。
ぼくもホステルに戻ると、1時間も経ってから、お菓子やジュースをいっぱい買い込んだキース一家が「一緒にホェールウォッチングに行かない?」などと誘いに来ました。
ひゃー、のんびりしてるねぇ、この人達は。
普段はバンクーバーアイランドの有名観光地トッフィーノに住んでいるキースの妹のアイリスや、アイリスの子供のシャルビィもいます。
でも、やっぱりさすがにもう、シャチはいなくなっちゃってるだろうな、と呆れかえりつつも、せっかくですからキースの鍋底船に同乗すると、ありゃりゃ、ホステルからでも見えるくらいのところで潮が噴き上がりました。
「戻ってきた! シャチ!」
近づいてみると、お父さんお母さん、それに子供1頭の家族でしたよ。
うわー、野生のシャチ、こんな風に見られるなんて、東京で生まれ育ったぼくには想像もできなかった大感激です!
それにしても、お父さんシャチは遠目にもホントに巨大、おっきい、凄い!
シャチの家族は3時間近くもその辺りを行ったり来たりしていたので、子供達は飽きちゃってぐずり出すほど、たっぷりホェールウォッチングできました。
ぼくも途中で飽きて他の方向をきょろきょろ見回していたら、岩場の影からアザラシがびびりながらシャチの家族の行方を見守っている姿などが発見できて面白かったです。
桟橋に戻ると、ストアのおやじが二階の窓から3年前の日記を広げて読み上げてくれました。
「1999年、4月18日。シャチが入り江に入ってきた。ダイニングルームからシャチを見下ろしながら昼飯を食った」
つづく。
2002年4月19日、今日は超エキサイティングなことがありました。
「はや~、春だというのにまだお客が一人も来ないよ」と呆然としていると、午前9時頃、ストアのおやじから電話がかかってきました。
「ゆき、無線聞いてみろ」
えー、朝からなんだヨン。
3年前、村のインディアンからなけなしの100ドルをはたいて買ったicomのVHF無線機のスイッチを入れると、
「巨大なシャチが2頭、アホーザット村の正面の海を移動中、ピーガガガ」 !!!!!ッ」
カメラをひっつかんで飛び出しました。
おやじに貰ったボロボロのチビ舟を修理しホンダの8馬力エンジンを搭載したぼくの愛船に桟橋からジャーンプ!
瞬時にエンジンスタート!
頭の中では「♪ルパン・ザ・サ~ァド」、とすっかりルパン三世。
ストアの2階からおやじが「シャチは3頭に増えたぞ」と叫ぶ声を背にフルスロットルですっ飛ばします。
おおおおお! たった8馬力といえど、ボートが小さいので、そうとうなスピードです。
ますます気分は大盛り上がりです!
しかし一方で、冷静沈着なもう一人のぼくが、燃料が残り少ないぞ、と計算しています。商売のホステルに宿泊客がぜんぜん来ないんで、ずいぶんと補給していなかったんです。
この調子ですっ飛ばしたら、帰りの分はやばいかも。
ええい、ままよ。
ここでスロットルの手をゆるめるわけにはいかないのじゃあ!
入り江を回り込んで村の正面が見えてきました。
「どこだ?」
沖合に一隻、船がゆっくり航行しています。と、その前方、激しく潮が噴き上がりました。続いて、垂直にいきり立った巨大な背鰭が。
で、でかい! 遙か、まだ1kmくらいはあるかも知れないというのに、この距離でもありありと分かる巨大さです。
うわー、でっっっかいっ! しかし、まだまだ距離がありすぎます。
ガス欠寸前であの巨大なシャチを追うのは無理か……。
痛恨の思いでスロットルをゆるめて唇をかみました。
と、そこへ、背後からボートのエンジン音が響いてきました。アサリ超人師匠キースが、暇つぶしのボートドライブに通りかかったのです。
ナイス、キース、いいぞ、キース。
その場で碇をうち、文字通り自分のボートを乗り捨てて、キースの船に飛び移りました。
「なんだ、どうした、ゆき?」
「シャチ、シャチ、ほらあそこ」
再び潮が噴き上がって巨大な背鰭が浮上します。
「お、おおお、でぇっかいなぁ」
キースでさえも驚いています。
「そうだ、子供達を連れてこよう」
え? えええ? 今すぐ追ってくれないの?
あ、あああ、行っちゃうよぅ。
自分のボートを乗り捨てたかいもなく、キースはそのまま子供達を迎えに家に帰っちゃいました。
あー、まー、しょうがないや。諦めました。
ぼくもホステルに戻ると、1時間も経ってから、お菓子やジュースをいっぱい買い込んだキース一家が「一緒にホェールウォッチングに行かない?」などと誘いに来ました。
ひゃー、のんびりしてるねぇ、この人達は。
普段はバンクーバーアイランドの有名観光地トッフィーノに住んでいるキースの妹のアイリスや、アイリスの子供のシャルビィもいます。
でも、やっぱりさすがにもう、シャチはいなくなっちゃってるだろうな、と呆れかえりつつも、せっかくですからキースの鍋底船に同乗すると、ありゃりゃ、ホステルからでも見えるくらいのところで潮が噴き上がりました。
「戻ってきた! シャチ!」
近づいてみると、お父さんお母さん、それに子供1頭の家族でしたよ。
うわー、野生のシャチ、こんな風に見られるなんて、東京で生まれ育ったぼくには想像もできなかった大感激です!
それにしても、お父さんシャチは遠目にもホントに巨大、おっきい、凄い!
シャチの家族は3時間近くもその辺りを行ったり来たりしていたので、子供達は飽きちゃってぐずり出すほど、たっぷりホェールウォッチングできました。
ぼくも途中で飽きて他の方向をきょろきょろ見回していたら、岩場の影からアザラシがびびりながらシャチの家族の行方を見守っている姿などが発見できて面白かったです。
桟橋に戻ると、ストアのおやじが二階の窓から3年前の日記を広げて読み上げてくれました。
「1999年、4月18日。シャチが入り江に入ってきた。ダイニングルームからシャチを見下ろしながら昼飯を食った」
つづく。