第5話 これがグースネックだっ!!

文字数 2,222文字

 アホーザット村のインディアンの中で、一番親切で一番仲良くしてくれていたサミーが、以前から気になっていた不思議貝系生物「グースネック」を持ってきてくれました。

 ストアのおやじに聞いたところ、貝ではなく「グースネック・バーニクル」つまりフジツボの類のようです。
 イタリアやスペインに数多く輸出されているということなので、イタリア料理の食材からたぐると以外と簡単に正体に行き着けるかもしれません。

 グースネックは、文字通り雁の首のよう、というか、人差し指をミイラ化させて醤油で戻すとあんな風になるんじゃないかというか、で、その頭のところにフジツボのような石灰質部分があります。
 群体でいる姿はメドゥーサの頭のよう。

 ぬぅ、不気味です。
 かなり不気味です。
 触感もぶにょぶにょして、か・な・り! 気持ち悪いです。

 しかーし、特派員たるもの、ここで怖じ気づいてはいられません。
 広島の淳さんから送られてきたメール「塩ゆでにすると旨い」という一言を信じて食います。
 食ってみせます。

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レポート楽しく読ませていただいています。
私は、ジュンといいます。(36歳、妻子有り)
貝掘りが大好きな者です。(現在住んでいる広島では潮干狩りというよりもダイレクトに貝掘りという方が通りが良いです。)

レポート中に出てきたグースネックとはエボシ貝のことではないでしょうか。
スペインへ旅行中にペルセベスという根元が黒く硬いシワシワの棒状で先端部が白と黒の石灰質上のフジツボ上の生き物を食べました。
ペルセベスは塩茹でして黒い棒状のところを歯で搾り出すようにして食べるのですが、貝と言うよりも甲殻類系の味がして非常に美味しかったと記憶しています。

この生き物の仲間は、日本の沿岸部にもいます。
カメノテという生き物なのですが、磯の岩の割れ目にびっしりついているのをよく見かけます。
日本でも大型のフジツボを食べている地域があると聞きます。
もし、これがエボシ貝であれば一度食されてみてはいかがでしょうか。

広島でも貝掘りが始まりました。
宮島の鳥居沖のアサリは甘くて最高です。
                                 ジュン K.
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 鍋で湯を沸かしている間に塩水を張ってあったバケツからグースネックの固まりを取り出すと、やつは「ブシュシュシュシュ」と音を発して、まるでアサリ様達と同様の反応を示しました。

「えい!」
 沸騰したお湯に塩と共に放り込みます。
 おお? なるほど、甲殻類系のいい匂いがしてきました。
 10分間ぐつぐつ煮ました。

 さあ、いよいよ食べてみます。
 て、どうやって食べればいいのかな?
 いいや「えい」、根本の部分にかぶりつきました。
 すると! 

 ぶちゅ-っ!! 
 オレンジの体液がぶちゅう-って、ブチュチュチュッて! 
 いやーん!
 びびりました。

 ええい、もうどうにでもなれ。がんがんかぶりつきます。
 グースネックは上からも下からもオレンジ色の体液をほとばしらせながらぼくを困らせてくれましたが、堅い表皮の下の肉が、引っ張ると形のまますっぽり抜けることを発見しました。
 気持ちのよいくらい形のまますっぽり抜けます。
 見た目はえぐいですが、縦にいっぱい繊維が重なった、要するに貝柱のような感じでした。

 身を裂いてみると、内側にはオレンジ色のつぶつぶがいっぱい。
 これは、卵巣(卵)? それとも他の内臓かな?
 食べた感じはそうですね、甲殻系といえばそうだし(やつはフジツボの一種なので、エビカニの仲間です)、貝のようだと言えば、それもそうです。

 水から出したときの反応と、裂いた感じが貝柱っぽい印象を受けたのとで、アサリみたいな味だなぁ、なんて思いながら食べました。
 この海域で獲れたグースネックは、スペインに大量に輸出されているのだそうです。あちらではけっこう高価だという話ですけど。
 
 いにしえの日本をしのんでハミングバードホステル特製「平城京ラーメン」を作ってみました。
 え? なんでカナダなのに平城京なの?
 それはね、ぐふ、ぐふふ……、「グースネックが入ってるからだよ」
 いやーん!
 (なぜグースネックで平城京かというと、ネット上に日本ではエボシ貝の食文化が平城京の時代から記録として残っているらしい、とあったからです)

 グースネックは堅い表皮がまるでサンドペーパー(紙ヤスリ)のようなので、かぶりついたときにじゃりじゃりして、それで「なんか、砂抜きしてないアサリみたい」という印象を受けたのでした。舌にヤスリかけられたみたい「ひりひり」。
 煮すぎると引っ張っても身が崩れてすっぽり抜けてくれず、少々食べにくくなることが判明。

つづく。
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