第54話 弟たちの勝手2
文字数 1,754文字
君主がいなければ、まともに相手にされない。対等の交渉は、不可能だ。フランスは、ヨーロッパの国々の中で、孤立してしまう。
元老院令により、ボナパルトは、ナポレオン1世として、フランス人の皇帝になったと宣言された。
兄さん。あんたは共和国を殺そうとしている。いいだろう! 暗殺しろ! そしてその死骸の上に立つがいい。しかし、共和国の息子のひとりとして言っておく。あんたが暴力で養っているこの帝国は、いつの日かまた、暴力によって打ち倒されるだろう、と!
*『ナポレオンの母』アラン・ドゥコー[小宮正弘]
乗り組んでいた艦隊が、サン=ピエール島に寄港した際、提督の許可を得、アメリカ合衆国、ボルチモアに滞在していた。
ここで彼は、卸売商人の娘、エリザベス・パターソンと知り合った。
1803年のクリスマスイブ、2人は結婚した。ジェローム19歳、エリザベスは18歳だった。
えっ!? 俺、皇族になれないの? 「殿下」って呼んでもらえないの?
(学生時代、デュイルリー宮殿でかしずかれて暮らした生活*が忘れられない)
ところが、妻のエリザベスには、上陸は許されなかった。
一人上陸したジェロームは、兄に会って許され、あらゆる継承権を認められた。
彼は、
妊娠中だった彼女は、フランス上陸を許されないまま、イギリスに立ち寄り、男の子を出産、赤ん坊と共に、アメリカへ帰った。
*詳しくは、ブログ「ジェローム・ボナパルト1」~
(一転して穏やかに)
お前の気持ちはよくわかるよ、ナポレオン。お前はいつだって、フランスのことを考えている。
フランスにとって、帝政は、必要なものだ。兄弟が、一致団結して、これを築かねばならない。
ナポレオンの戴冠式を前に、母レティツィアは、ローマへ向かった……。