第21話 天気の話
文字数 1,392文字
(手紙)
かわいいかわいい、姪のマリー・テレーズや。
よもや、オーストリアの アカマル急上昇中のバケモノ 従兄に心を移してはいないだろうね?
お前が、儂の甥のアングレームと結婚することは、生前のお父様とお母さま*も、望んでおられたのだよ。
それもこれも、ブルボン家結束の為だ。わかっているだろうね?
*ギロチンで処刑されたルイ16世とマリー・アントワネット。
ただしこのくだりは、ルイ18世の創作である可能性が高い。
(ウィーン・ハプスブルク宮廷)
(返信)
愛しい叔父様、ご心配なく。
私の心は、常にフランスのものです。
けれど、
彼からお手紙を頂けたら、私も安心できるのですが……。
(手紙)
ウィーンにいる従妹さん、元気ですか?
今日、こちらは、朝から雨でした。
昨日も雨でしたが、午後から晴れました。
明日は曇りでしょう。
来週もずっと雨みたいです。
雨が止むのは、再来週に入ってからのようです……
(以下、天気の話が延々)
皇帝のお従妹様、先ごろタンプル塔から解放されました、マリー・テレーズ王女にお目通り願いたく、まかりこしました。
この男、叔母のアントワネットの恋人だったんだよな……。
(傍白)
フェルゼン……。
この男が、ルイ16世夫妻が、あちこちに分散させた財産を集めているのは知っている。
それにより、ブルボン家の再興を図るつもりなのだ。
まったくどこまで、亡き叔母、マリー・アントワネットに忠実なのだろう!
叔母が死んで、もう、何年も経つというのに。
恋とは、凄まじいものだな……。