第21話 天気の話

文字数 1,392文字

[ルイ18世]


(手紙)



かわいいかわいい、姪のマリー・テレーズや。


よもや、オーストリアの アカマル急上昇中のバケモノ 従兄に心を移してはいないだろうね?


お前が、儂の甥のアングレームと結婚することは、生前のお父様とお母さまも、望んでおられたのだよ。


それもこれも、ブルボン家結束の為だ。わかっているだろうね?



*ギロチンで処刑されたルイ16世とマリー・アントワネット。

ただしこのくだりは、ルイ18世の創作である可能性が高い。

[マリー・テレーズ]


(ウィーン・ハプスブルク宮廷)

(返信)



愛しい叔父様、ご心配なく。

私の心は、常にフランスのものです。


けれど、アングレーム公(父方の従兄)は、何もおっしゃってきません。

彼からお手紙を頂けたら、私も安心できるのですが……。





アングレーム!

こら、何をぼーっとしておる!


マリー・テレーズが不安になってるじゃないか!


と 手紙 書け





[アングレーム公]


(手紙)


ウィーンにいる従妹さん、元気ですか?

今日、こちらは、朝から雨でした。

昨日も雨でしたが、午後から晴れました。

明日は曇りでしょう。

来週もずっと雨みたいです。

雨が止むのは、再来週に入ってからのようです……

(以下、天気の話が延々)

(手紙を読み終わり)


アングレーム公からの手紙だわ!


(にっこり)

[神聖ローマ皇帝フランツ]


これはこれは、フェルゼン伯爵。はるばるスウェーデンからようこそ。


ウィーンには、どのようなご用向きで来られたのですか?

[フェルゼン伯爵*]



皇帝のお従妹様、先ごろタンプル塔から解放されました、マリー・テレーズ王女にお目通り願いたく、まかりこしました。



18話「ラシュタット会議」参照

 ブログ「スウェーデン ホルシュタイン・ゴットルプ王朝 2」

ほう。

マリー・テレーズに。

嫌な予感がする。

この男、叔母のアントワネットの恋人だったんだよな……。

亡きマリー・アントワネット様は、処刑される前に、かなりの財産を、甥である皇帝、あなたに託されたはずです。


娘であるマリー・テレーズ王女に、それを返還願いたく存じます。

(傍白)

やっぱり! 嫌な予感と言うのは当たるなあ。


(フェルゼンに)

なりませぬな。

は?

なんと?

ならぬといったら、ならぬ!


だが、御安心なさい。

彼女は、私の叔母や妹たち、即ち、ハプスブルクの姫君たちと同等の扱いを受けている。

少しの不自由もさせてはいない。

お言葉ですが、皇帝、アントワネット様があなたに預けたのは、金と宝石、かなりの財産であるはずですぞ?

それが問題なのだ、フェルゼン伯。

あのような莫大な財産を、未熟な娘に渡すような、危険なことができるわけがない。

(傍白)


フェルゼン……。

この男が、ルイ16世夫妻が、あちこちに分散させた財産を集めているのは知っている。

それにより、ブルボン家の再興を図るつもりなのだ。


まったくどこまで、亡き叔母、マリー・アントワネットに忠実なのだろう!

叔母が死んで、もう、何年も経つというのに。

恋とは、凄まじいものだな……。

ですが、皇帝、フランスでは17歳で成年とみなされます。マリー・テレーズ様は、その年齢に達しておられます。
そのことは知っている。

だが、今、財産を渡すわけにはいかない。


彼女が結婚する時まで、私が預かる。

………………。


(傍白)

皇帝は、マリー・テレーズ様と、弟のカール大公との結婚を目論んでおられるのだ!

彼女は、オーストリアに取り込まれてしまう!

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色