第32話 ナポレオンのくそ

文字数 1,128文字

[クレベール将軍@アレクサンドリア]


(ナポレオンからの手紙を読む)

わなわなわな

(怒りで震える)



※クレベール

 ブログ「クレベール 1」

 ブログ「クレベールとの確執 1」

※詳細は

 ブログ「スミス復権」

くそっ!

ナポレオンのやつ、こっそりフランスへ帰りやがった!


こんな手紙一本で、エジプト遠征の後始末を、全部俺に押し付けて!


(わなわなわな)

まだエジプトには、2万もの兵が取り残されているんだぞ!

その大半が、ペストを患っている!

あの野郎はズボンにくそをいっぱいにして、俺たちを置き去りにしていった。俺たちがヨーロッパに帰ったら、あいつの顔にそのくそをなすりつけてやる。*



*『ナポレオンに背いた黒い将軍』トム・リース[高里ひろ]


しかし、ナポレオンのくそを持ち帰ることができぬまま、1800年6月14日、クレベール将軍は、エジプトで、シリアの学生に暗殺されてしまう……。



翌1801年、司令官を欠いたまま、エジプト遠征軍は、イギリス軍に降伏した。


5万でトゥーロンを出航した兵は、1万5000にまで減っていた。



上の弟、リュシアン*から、総裁政府打倒の計画があると聞いたナポレオンは、遠征の始末をクレベール将軍に押し付け、わずかな手勢を連れて、エジプトを抜け出した。



*ブログ「リュシアン・ボナパルト1」~

ナポレオンを乗せた船は、まず、故郷コルシカ島へ立ち寄った。

検疫逃れの為である。

下の弟ルイ*に、敵の旗を持たせて、一足先にパリへ帰らせたが、その際、コルシカ島に立ち寄らせた。


だから、知っている。


コルシカは、故郷の英雄ナポレオンに、検疫などという失礼なことをするはずがない!



ブログ「ルイ・ボナパルト」

外国からの船の検疫には、40日ほどを要する。


しかし、クーデター計画は、急を告げていた。


呑気に40日も待っていられない。


[コルシカの人々]


ナポレオン、ばんざーい!

おかえりなさい、故郷の英雄!

[コルシカの人々]


検疫?

そんなの、不要ですよ!

なにせあなたは、コルシカの誇りなんですから!


フランス本土へは、本来ならマルセイユから上陸しなければならない。


しかし、コルシカで数日を過ごしたナポレオンの一行は、南仏・フレジュス港に向かい、そこから上陸した。


これも、検疫逃れの為だ。


マルセイユは、18世紀にペストが流行してからというもの、ぴりぴりしているからな!

きっかり40日は、留め置かれるに違いない。

その点、フレジュスは寒村だ。のんびりしたものさ。


なにしろ、この船は、エジプトからの帰港ではなく、コルシカ出航、ということになる。厳しい検疫なんて、必要ない!


こうして、部下の兵士達を置き去りにし、

保健衛生上の規則を破りまくって、


……ナポレオンは間に合った。



その日。

ブリュメール18日に。


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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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