第37話 ホーエンリンデンの戦い

文字数 1,796文字

[神聖ローマ皇帝フランツ]


イタリアでは、マレンゴで、フランス軍にボロ負けした。

いったいどれほどの戦争賠償金を請求されるのだろう。

ああ、恐ろしい、恐ろしい。

[元外務大臣トゥーグート]


どうやら、第一執政(ナポレオン)は、和平交渉には乗り気でないようです。


モロー軍がドナウ川に向けて進軍しました。**




*この年(1800年)の9月に外相を辞任している。後任はコベンツル。しかし、彼は国外での外交折衝に忙しく、依然として前任者のトゥーグートが、国内任務を委ねられていた。

**カール大公との決戦(10話「ライン防衛」)の後、フリュクティドールのクーデターに巻き込まれ、一度解雇されたモローは、第二次対仏大同盟に鑑み、再雇用され、イタリアへ赴いた。後、ジュベール将軍(イタリアで戦死)に代わり、再びライン方面へ戻ってきていた。

ブログ「ジュベール将軍、モロー将軍」

また戦争が始まるのだな?

しかも、ドイツで。

これ以上、イタリアを荒らされるよりは、ドイツで戦う方が、まだマシというものでしょう。
だが、誰に指揮を執らせる?
そりゃもちろん、ドイツでは負けなしの、カール大公です。
カール?

あいつはダメだ。体調が悪いと言っている。


それに、この頃ひどく、私に対して反抗的だし……。

[カール大公]


(回想)


軍の改革をせぬうちは、フランス軍に勝てません!

傭兵の軍団が、どこまで戦えるとお思いか?

軍制改革の為に時間が必要です。

今は、なんとしても休戦に持ち込むべきです!

(びしばし)

(傍白)


以前は、あんな言い方をする弟ではなかった。

やっぱり、アレがまずかったんだろうなあ……。

(回想:アレ


なぜ、マリー・テレーズをミタウになどやったのですか?

それで彼女が、幸せになれるとお思いですか!?



*ルイ18世の亡命先。ロシアのミタウで、マリー・テレーズは、アングレーム公と結婚した

 24話「マリー・テレーズの選択」参照

(傍白)


そんなことを言ってもなあ。私が止めて、止められるような娘じゃなかったのだ、マリー・テレーズは。


パーヴェル1世(ロシア皇帝)に言われて、私は、彼女の旅費まで支払わされたんだぞ。

ヨーハン大公はいかがでしょう?
へ?
ですから、ドイツ戦線での、オーストリア軍・司令官です。

ヨーハン*!?

いや、だって、あいつはまだ、たった18歳だぞ?

それをいきなり、前線の指揮を委ねるなんて!



※ヨーハン大公は、皇帝とカールの下の弟。

 ブログ「ヨーハン大公」

ヨーハン大公には、古参の将軍をおつけ致します。

大丈夫。私は、

この上ないほどに達観しています。



*『ナポレオン もう一人の皇妃』アラン・パーマー[岸本完司 訳]


ヨーハンが指示されたのは、イン川を渡り、モロー軍の背後を衝いて、フランス本国との連絡を経つこと。


モローは、湖沼の多い地域(ミュンヘンから30キロ、ホーエンリンデン村の近辺)に立て籠った。

12月3日。


モローは、自軍を二つに分けて、行軍中のオーストリア軍を襲った。


一つがオーストリア軍を阻止し、もう一つが、左側面から攻撃した。

ヨーハン軍は、その日だけで、1万8000人を死傷、あるいは捕虜として失った。
[神聖ローマ皇帝フランツ]


ひえぇぇぇぇ。

ベネディクト大修道院から、モロー軍の偵察騎兵の姿が見えるぞ!



*ウィーンから55マイル(約88.5km)離れている

カール、やっぱりお前じゃないとダメだ。

何とかしてくれい!

[カール大公]


フランスとの講和を、お認めになるなら。

認める!

認めるから、早く!


開戦から約1ヶ月後の1800年12月25日。


シュタイアーで、カール大公は、モローと休戦協定を結んだ。

ウィーンから、わずか数キロの地点だった。



フランスにとって、ホーエンリンデンでの勝利は、マレンゴの勝利と同じくらいの重みを持つものであった。


しかし……


いや、違うね。

ホーエンリンデンの勝利なんて、大したことないから。

スゴいのは、モローより、俺! ナポレオン! つまり、


重要なのは、俺が司令官だった、マレンゴの勝利でしょ!


あ。

俺の葦毛の愛馬。名前を「マレンゴ」ってするから!



36話「マレンゴの戦い」参照

(傍白)


しかし、ホーエンリンデンで勝利するとは……。

モローには、権力への野望があるに違いない。

あいつを、なんとかしなくては……。



34話「妻と元カノ」末尾参照

 ブログ「モロー」

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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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