第1話 ピルニッツ宣言

文字数 1,239文字

[神聖ローマ皇帝レオポルド2世]


どうしましょう。

[プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世]


そりゃ、アルトワ伯※、じきじきのお願いですから。



※ルイ16世の弟。後のシャルル10世。

ブログ「シャルル10世」

はあ、やっぱり、彼は、あなたの国にも行きましたか。


フランスの革命政府を叩いてくれ、と。

ええ。

しかし、皇帝も、ご心配でしょう。逃亡に失敗されたフランス国王夫妻が、ヴァレンヌで捕えられ、パリへ連行されてしまって。



※ルイ16世とマリー・アントワネット

そりゃ、マリー・アントワネット(フランス王妃)は妹ですからね。
絶対に成功すると、フェルゼン伯は請け合ったのですが……。かえって、ルイ16世のお立場を悪くしたのではないかと、危惧しております。



※スウェーデンの貴族。マリー・アントワネットと恋愛関係にあったといわれる。国王夫妻の逃亡を企てた。

王弟(ルイ16世の弟)達も、必死なのでしょうな。亡命貴族と一緒になって、外国軍をフランスに呼び込もうと躍起になっています。
それですよ! 他国の内政に口を出すのは、気が進みません。


フランスのもめごとは、フランス国内で解決してほしいものです。つか、革命とかいうものが、飛び火してきたらイヤ……。

革命? 全くね。めんどうの匂いがしますな。
実のところ、地元オーストリアは今、混乱しておりまして。
ああ、ヨーゼフ2世(先帝)がお亡くなりになったばかりですね。まだお若かったのに……。
(先帝)は、トルコとの戦争に従軍して、体を壊してしまったのです。ですが、まさかこんなに早く亡くなると思いませでした。


古い勢力と新しい勢力の折り合いがついておらず。困ったものです。

それは大変ですな。いや、宮廷の勢力というものは、うるさいものです。私も陰でなんと悪口を言われているやら。特に私は、偉大なる先帝フリードリヒ大王(2世)の息子ではなく、甥ですからな。最初から、信頼がないのです。
はあ……(ため息)

私も、マリア・テレジア(女帝)の息子です。前任者や前々任者が有名人だと、お互い苦労しますな。

ほんと、よその国のごたごたに首を突っ込む余裕など、ありませんよ。フランスには、こちらの準備が調ったら鉄拳を下すぞ、くらいの脅しに止めておきますか。
そうですな。穏便に、アイマイに。

あんまり度が過ぎると、口と手を出しちゃうぞ、くらいの感じで。

じゃ、そんな感じで、「ピルニッツ宣言」といきますか。


ところで皇帝、お顔の色が優れないようですが……。

心労ですかな。宮廷政治と言うのは、本当に難しい……。


1791年8月27日。

神聖ローマ帝国とプロイセンの名で、革命の渦中にあるフランスに対し、ピルニッツ宣言が発令された。



神聖ローマ皇帝レオポルド2世が亡くなったのは、その半年後のことである。

彼の跡は、息子のフランツ2世が襲った。


プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム2世も、ピルニッツ宣言の6年後に亡くなっている。

跡を継いだのは、息子のフリードリヒ・ヴィルヘルム3世である。


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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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