第44話 若き皇帝アレクサンドル
文字数 1,246文字
一時的な優遇の後、領地に送り返されたり、国外旅行を命じられたり、国境警備の連隊に配置されたりして、これらの人たちは、ペテルブルクから姿を消した。
反面、彼は、熱心に仕事をこなした。
けれど、君主制は、何より大切だ!
土地の割譲なしに、農奴を解放する方法はないかな?
けれど、土地なしで解放したら、農奴達は、生きていけないんだよな……。
アレクサンドルは、自分の矛盾に気がついていなかった……。
彼は、宮廷の女性に人気があった。
彼もまた、女性を虜にすることに夢中になった。
友人の妻、フランスのオペラ歌手、女優、ロシア宮廷の貴婦人たち……。
けれど、彼は、決して、深追いはしなかった。
相手が自分に熱を上げてくれたら、それで満足だった。
ナルィシチキナ一族は、ロシアの名門で、夫は、皇帝の狩猟頭だった。皇室との繋がりもあり、大変、富裕な一族だった。
彼女は、アレクサンドルから、なにひとつ、欲しがらなかった。政治への介入や、親族の取り立ての請願などもなかった。(その必要はなかった)
マリヤの元で、(彼女の夫に 生温かく 見守られつつ)アレクサンドルは、第二の家庭を築いた。二人の間には、女の子が生まれた。
夫の寵姫に子ができた……。
彼女のかつての恋人、故パーヴェル1世に追い払われたチャルトルィスキは、友であるアレクサンドルに呼び戻された。
が、今更、夫の友人との関係を復活させることはできない。また、チャルトルィスキとの間に生まれた女の子も、今は亡くなっている。
孤独な彼女は、アレクセイ・オホートニコフ という近衛士官と恋に落ちた。*
しかし、彼は、劇場から出たところを、何者かに刺殺さてしまう……。**
*二人の間に女児が生まれたが、1歳半で亡くなった。
**アレクサンドルの弟、コンスタンチン大公の命令とも。
こうした中、アレクサンドルの情熱は、ただひとつ、政治に向けられていた。
彼は、祖母や父の代からの高齢の臣下に代えて、若い友人たち*を採用した。
しかし、全ての決定権は、彼自身が握っていた。
*42話「父帝暗殺」参照