第19話 Flaggenstraße(旗通り)

文字数 1,058文字

(きょろきょろ)



あれ? ベルナドットは?


邪魔だったから、奪った敵の旗を持たせて、パリへ送り込んだはずなのに?



*16話「タリアメントの戦い」参照

ブログ「ベルナドット1」

おお! 彼は大人気だったぞ。足が長くてハンサムで。貴婦人方に大人気だった。外務大臣のタレイラン*も、彼に興味深々だった。



ブログ「タレイラン」

えっ、タレイランにそんな趣味が……。

いや、たとえそうであっても、彼は、高名な 風見鶏 政治家だ。


私もぜひ、会っておかなくちゃ。

それはそうと、ベルナドットは、イタリア軍方面の司令官になりたがっている。君はエジプトに行くわけだから……、

冗談じゃない! 

部下に大人気のあいつを、これ以上のさばらせてはいかんのです!

そうはいっても、ベルナドットは、素晴らしい活躍だったというじゃないか。だから、本人の希望を聞いてやっても……、

いーえ!

私の後釜というのは許せない! 

そうだ。インドへ転属というのはどうですか?


そりゃまた……いやがるだろうなあ。

めんどうな男は、遠くへやるに限る。


カナダで人民を鼓舞して、革命を起こさせるとか。

………………。


結局、多額の年俸と旅費、補助金を提示され、ベルナドットは、オーストリア大使の任を受け容れた。

当然のことながら、当時、ウィーンには、反仏感情が渦巻いていた。

[ウィーンっ子]


おい、見ろよ!

フランス大使館のバルコニーに三色旗が挙げられているぞ!



*当時、どの大使館も、国旗を掲げる習慣はなかった

[ウィーンっ子]


神よ、皇帝フランツを守り給え!


暴徒と化した市民らは、窓に石を投げ、バルコニーの旗を引きずり下ろすと火をつけ、燃やしてしまった……。
[ベルナドット フランス大使]


こらあ!

神聖な三色旗に、なんてことをするんだ!

(怒怒)

[皇帝フランツ]


(傍白)

うわ、まずいことになった。

我が国は、敗戦国なのに、戦勝国のフランスを怒らせてどうする……。

自由・平等・博愛の精神の象徴、三色旗を……。


なんたる侮辱だ。


(怒怒怒)


(皇帝フランツより書簡)


あんまり怒らないでね。

それと、本国に言いつけないでね。

皇帝の手紙? そんなの、うっちゃっとけ!


そもそも俺は、こんな野蛮な国には、来たくなんかなかったんだ!

フランスへ帰るぞ! 大使館の職員も全員だ!

あ!

国境までは、オーストリア政府が、責任を持って、俺らを護れよ! 


わずか7週間で、ベルナドットの外交官としての職歴は終わった……。


[ウィーンっ子]


俺たちはよく頑張った! 

[ウィーンっ子]


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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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