第42話 めちゃくちゃ

文字数 1,173文字

[パーヴェル1世]



エカチェリーナ2世(おふくろ)が、死んだ。



おふくろのやつ、俺を飛び越して、息子のアレクサンドルに帝位を譲るつもりでいやがったが。



アレクサンドルへ譲位する前に倒れてくれて、助かった。



証拠の書類は、火に投げ込んでやるぜ!


こうして、亡くなった女帝の遺志とはうらはらに、息子のパーヴェル1世が、ロシア皇帝に即位した。



女帝時代に腐敗しきっていた元老院の改革、食糧貯蔵基金の設置、宮殿の入り口に投書箱を設けて、下々の者の意見を聞く……。



数ヶ月間は、むしろ賢帝だった。


[アレクサンドル]



凄い!

さすがお父様だ!


おばあさまは僕を可愛がってくださったけど、お父様が皇帝になって下さって、良かった……。


しかし……


ナポレオンめ……。

あいつ、栄光あるマルタ騎士たちを島から追い出しやがった!


反ナポレオンだ!

ロシアも、対仏大同盟に参加だ!



23話「諸国の思惑・カール大公の恋」25話「マルタ島占拠」、参照

え? マレンゴ?

フランス軍が数に勝るオーストリア軍に勝った?



カッケー! さすがナポレオン!

イギリス野郎をやっつけろ!

フランスと同盟だ!



36話「マレンゴの戦い」

思い出した!

確か、我が国のミタウに、ブルボン家の王族が亡命していたな。


追い出せ!


だが、きれいでかわいい王女、マリー・テレーズは、ロシアにいてもいいのだよ……。



24話「マリー・テレーズの選択」

ところで、アレクサンドル。


エリザヴェータに赤ん坊が生まれたな。



*アレクサンドル妃。下の画像

はい、お父様。

女の子でした。

ちょっと聞くが、

金髪の夫と金髪の妻の間に、黒髪の子どもが生まれるものかね?

それは、僕が、妻をほっぽといたからで……。寂しさのあまり、彼女、最初は、女*に手を出そうとしましたし? かわいそうだから、僕、妻の後押しをしてあげました。



*ゴロヴィーナ伯爵夫人

………………。

……ええと。


赤ん坊の父親のチャルトルィスキは、僕の大事な親友ですから……。

(しどろもどろ)



*ポーランド貴族。下の画像

 ブログ「アダム公チャルトルィスキ」

わしは、お前の周りに、頭のいい友達がいるのが我慢できん!


シベリアは我慢してやる。だが、ちょうどいい。イタリアに欠員がある。その男は、イタリア送りだ!


ええっ! イタリアは遠い……。

大事な親友と別れなくてはならないとは……(涙)。


アレクサンドルは、友と、新しい思想を語り合うことが好きだった。

友は遠慮なく、未来の皇帝を論破するし、アレクサンドルも負けてはいなかった。



しかし、パーヴェルは、こうした息子の友人たちを警戒した。

アレクサンドルの友人たちは、自由主義の嫌疑をかけられ、ある者は罷免、ある者は自ら外国へ旅立ち、ちりぢりになっていった。



あっ!

あの近衛連隊は、号令通りに行動できていないぞ!


全軍、まわれ、右!

シベリアに向かい、行進!


めちゃくちゃであった。


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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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