第24話 マリー・テレーズの選択

文字数 1,506文字

[神聖ローマ皇帝フランツ]


(窓の外を見ながら)

ロシア軍が、わが国土を横切っていくな。

[外務大臣トゥーグート]


ロシアは同盟国ですし。


遠征ロシア軍のスヴォルフ将軍は、パーヴェル1世肝いりの有能な方です。


イタリアへの移動を援助する為に、我が国での補給業務を許可したのです。



*第二次対仏大同盟。23話「諸国の思惑・カール大公の恋」参照

…………。

(ため息)

フランスとの戦いはまだ続いているのです。

カンポ・フォルミオでの条約*は、単なる休戦協定でしかないと、私は思っています。



16話「タリアメントの戦い」参照

下はロシアのスヴォルフ将軍
ロシアのスヴォルフ軍が、イタリアで勝利を重ねたことにより、連合軍に余裕が生まれた。


連合軍は作戦を切り替え、オーストリアのカール大公軍をライン方面へ転じた。



*この先の、「鬼の居ぬ間に」参照


ライン方面には、フランスのジュールダン軍が入っていた。


[ジュールダン]



再びのライン川流域での戦いだ。


前回*は、オーストリアの貴公子(カール大公)ごときに、さんざんにやられてしまった。

ドイツの地理を把握していなかったせいだ。


だから今回は、早くに臨場した。

すでに、この地の、戦略上の拠点は抑えてある!


今度こそ、勝つぞ! 雪辱戦だ!




10話「ライン防衛」参照

(戦役を詳しく書き足しました 2020.5.8 せりもも)

再び、ライン川流域で、オーストリアフランスの戦いの幕は、切って落とされた。

【オストラッハの戦い】(1799.3.20-22)


オーストリア軍80,000 VS フランス軍46,000

カール大公の巧みな戦術で、ジュールダンのフランス軍は撤退。

【シュトックの戦い】(3.25)
くそっ!

そもそも、わがフランス軍は、数で負けてる。だが、……


単純な攻撃でいこう! わが軍を4つに分けて、

敵の右翼へ2軍、

中央・左翼へ、それぞれ1軍ずつ、

同時攻撃だ!

[カール大公]


(奇襲を受け、押され気味)


この状態で、側面攻撃されるとまずい。よし。私が、ハンガリーの手榴弾兵を率いて突撃しよう。

[オーストリア軍事指揮官*]


(カール大公の馬の轡を抑えて止める)

何をおっしゃいます! 大公自ら行かれるなんて!



*Karl Aloys zu Fürstenberg

大丈夫だ。

私の兵は、よく訓練されているから。

軍事指揮官に馬を取られてしまったので、カールは、徒歩で指揮を執る準備を始めた。
お立場をお考え下さい。

なりません!


その立場だ。


フランス兵の分散攻撃のせいで、戦場は膠着し、血みどろになっている。


わが軍は、ただでさえ、傭兵の集まりだ。フランス兵の士気には叶わないところがある。


私の出陣こそが、みなに連帯感を与えるのだ。

いいえ!

大公がそのような危険な目にさらされる前に、この私の命を捧げます!

この軍事指揮官は自ら出陣するも、戦死。


結局カール大公自らが兵を率いて、勝利をもぎとった。

[ジョールダン将軍]


くそっ!

また、オーストリアのプリンスに負けた!

この後、6月5日、カール大公は、チューリヒの初戦で、マッセナ将軍に対して勝利を収めている。
[カール大公]


なんだって!?

マリー・テレーズが?

[ウィーンからの伝令]


マリー・テレーズ様におかれましては、去る5月にロシアのミタウに旅立たれましたが、この6月に、アングレーム公と、華燭の典を挙げられました由。



*ナポレオンの第一次遠征によりイタリアを追われたルイ18世は、1799年現在、パーヴェル1世の庇護の元、ロシアのミタウに滞在中。


ルイ16世とマリー・アントワネットの娘、マリー・テレーズ。


フランスとオーストリア、両国の従兄の間で揺れる彼女が選んだのは、「フランス」だった……。


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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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