第18話 ラシュタット会議
文字数 1,043文字
[総裁バラス]
イタリアへ行ったきり、帰ってこない。
ボナパルトは何をやっているのだ?
[事務官]
共和国*を二つ造り、優雅に暮らしているということです。
*「姉妹都市共和国」と呼ばれ、フランスの傀儡国家。
何を呑気な!
その上、ジョゼフィーヌまで行ったっきりで……
いや。
ボナパルト将軍には、やってもらわねばならないことがある!
至急、パリへ戻ってくるよう、伝令を送りなさい。
その頃、ナポレオンは、ラシュタット会議
※に顔を出していた。
※第16話「タリアメントの戦い」参照
元フランス王妃マリー・アントワネットとのご関係を教えてください!
他人の恋愛に、大変興味があります!
ちなみに私の愛読書は、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』でして……。
結局、ラシュタット会議では、実のあることは、何も決まらなかった。
1週間ほど参加しただけで、ナポレオンは、パリに呼び戻された。
[総裁バラス]
ナポレオン、君に、叩いてほしい敵がいる。
任せてください! スペインですか? ロシアですか?
オーストリアは、当分立ち直れないでしょうから……まさか、トルコ?
立憲君主制でありながら、我々の共和制に、執拗な横やりを入れてくる。
ピット内閣は、保守色を強め、労働者を搾取し続けている。
アメリカが独立を果たしたとはいえ、イギリスには未だ多くの植民地がある。
それじゃなくても、いち早く産業革命を経験したイギリスは、裕福だ!
なるほど……。
イギリスは、敵ですね!
では、エジプトへ行きます。
実は、ポシュエの書いた本
*を読みまして。エジプトは素晴らしい! かのアレクサンダー大王の平らげたエジプト! クレオパトラのエジプト! なんて詩心をくすぐられるんだ!
*『世界史論』
ですから、西はエジプトのチュニスやアルジェから、オリエント遠征軍を繰り出して、シリアを征服、イラク、イラン、アフガニスタンを横断して、インドへ至る、大帝国を築き上げるのです!
では、こう申し上げましょう。
インドからイギリスの補給路を、エジプトで断つ、と。
なるほど。それならわかる。
至急、エジプトへ行きたまえ。
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