第13話 ルイ18世の焦り

文字数 941文字


フランス革命で国を追われたブルボン家は、ヨーロッパの各地を放浪していた。


ルイ16世の弟プロヴァンス公は、この時、イタリアのヴェローナに滞在中だった。イタリア滞在は、ナポレオンがイタリア遠征で勝利するまで続く。



後に彼は、ルイ18世を名乗る。17世としなかったのは、(兄の子)(この時点ではまだ確実な生死は不明)に敬意を表した為である。


ブログ「ルイ18世」

[ルイ18世]


ああ、なんてこった! まずいぞ。これは、まずい!

おい、アングレーム()を呼べ!

[アングレーム公ルイ・アントワーヌ]


お呼びですか、伯父上。



※ルイ18世の弟の子。ルイ18世には子どもはいない。甥であるアングレーム公が、次世代のブルボン家を継ぐ立場。

ブログ「アングレーム公ルイ・アントワーヌ」

お前、聞いたか?

マリー・テレーズ(兄上の娘)が、ウィーン宮廷に迎えられたことを。

はい。

従妹が、タンプル塔を出れて、本当に良かった。

何を呑気なことを!

ウィーンには、とんでもないのがいるんだぞ!

は?
とてつもなく魅力的で、若くて精力的で、

女性に、てひどい人気があって、

しかも、運勢アカマル急上昇中という、バケモノが。

それは……バケモノなんですか?
まともに戦ったら、お前じゃ勝ち目がないことは明らかだ!
戦う?

オーストリアは、同志の筈ですが? フランスの革命政府と戦ってくれています。我々貴族軍も、その旗の下に多く集まり……、



※革命でフランスを追われた貴族たち。第2話「革命戦争とヴァンデの蜂起」参照

(遮り)

お前がカール大公に勝てるものか!
カール大公?
同盟軍の最年少司令官にして、連勝に次ぐ連勝、しかも、まばゆいほどの白馬の貴公子で、それもそのはず、れっきとしたオーストリアのプリンスだ。


まともに戦って、勝てる相手ではない!




ぽーっと突っ立っておるでない! 

戦わずして負けは許さぬぞ。

とっとと、手紙を書け!

手紙?

誰に?

オーストリアにいる従妹に! マリー・テレーズにだ!
マリー・テレーズに?

なぜ?

ブルボン家結束の為に、だ!

ブルボン家の次世代の跡継ぎは、お前なのだぞ! しっかりせい!

……と言われましても、

手紙? 何て?

恋文に決まっておるだろうが!

とっとと書かんか!

彼女を、カール大公に盗られるぞ!

………………。

(真っ赤)

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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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