第9話 イタリア遠征

文字数 1,390文字


結婚した年の3月27日、ナポレオンは、イタリア派遣軍司令官に任命された。


[総裁カルノー]


ウィーンを挟み撃ちにしよう!

ジュールダン(北部軍)

モロー(中央軍)


は、ライン川流域を通ってウィーン北部へ進軍、

ボナパルト(南部軍)は、南のイタリア方面から、


ウィーンを目指すんだ!

ナポレオンに与えられた軍は4万弱。


対するイタリア方面の、オーストリアと同盟軍は、合せて6万だった。


兵士諸君!

諸君には満足な服も靴もなく、栄養状態も悪い。政府は諸君に全てを負い、しかも、何一つ、諸君には与えてくれない!

諸君にあるのは、勇気だけだ! だが、勇気だけでは、成功はできない。

だから、この私が、諸君を豊かな大地に導こう。

イタリアだ!

諸君はそこで、名誉栄光を見出すだろう!


イタリアにおける、フランス軍の活躍は目覚ましかった。

若き司令官、ナポレオン・ボナパルトの元、次々とオーストリア・同盟軍を打ち破っていった。


戦争大臣カルノーの思惑より、ナポレオンは早く、イタリア(のピエモンテ・オーストリア勢。オーストリア軍のイタリア中心部はミラノ)を平らげた。


北からやってくる、北部軍と中央軍を待つ間に、ナポレオン軍は、イタリア中央部を襲撃した。パルマ、モデナ、トスカーナを攻略し、さらに、教皇領の一部を占領、フランスの傀儡国家である「姉妹共和国(チザルピーナ共和国)」に割譲させた。



*ライン川の下流と上流をそれぞれ渡河してやってきた両軍は、カルノーの挟み撃ち作戦を遂行することはなかった。詳細は、この後の「ライン防衛」参照

[ナポレオン]


(手紙)


ジョゼフィーヌ。君がいないと寂しいよ。

早くこっちへ来ておくれ。

イタリアには美女がいっぱいいる。

この美女の大攻撃に背を向けて逃げ回っているのは、ボナパルトただ一人だ!

覚えているかい、私が君の靴や、服をぬがせて、君をそっくり私の心臓の中にはいりこませたあの夢を?※※
あなたの胸に口づけを。もう少し下の方に、さらにもっと下の方に口づけを贈る!
いいかね。来るんだよ。きっと、きっと、来るんだよ?
近く、君をこの腕に抱きしめて、赤道直下のような燃える接吻を浴びせることができる※※かと思うと……。
さあ、翼をはばたかせて、早く来なさい。早く!
パリ……。

[ジョゼフィーヌ]


あら、また手紙?
イタリアへなんて、行きたくないわ。

ボナパルト家の姑や妹たちも来るのだろうし。


どちらかというと、私は、あの人達に憎まれているのだわ。

え? 返事を書け? めんどくさいなあ……。

[トゥーロン勤務、参謀/ルクレール]


(やってくる)

始めまして、ボナパルト夫人。

わたくしは、トゥーロン包囲戦で、ご夫君のボナパルト将軍の元で戦いました。

トゥーロン……(聞いたことがある)

ああ!(思い出す)

本日は、尊敬する将軍の令夫人の元へ、表敬訪問に参りました。
それはそれは……。

(じっと見つめる)

……。

(動じない)

(にっこり)

お若いのに、律義なことね。

で、そちらは?

(ルクレールの傍らに控えた軍人を指し示す)

わたくしの補佐官です。
[イポリット・シャルル]


軽騎兵、イポリット・シャルルと申します。

じぃ……

(見つめる)

ぽっ

(赤くなる)

……。

(何も気が付かない)


引用

※ 恋するジョゼフィーヌ―ナポレオンとの愛 ジャック・ジャンサン[瀧川好庸] 中央公論社

※※ ナポレオン言行録 オクターヴ・オブリ偏[大塚幸男] 岩波書店

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色