第53話 弟たちの勝手1
文字数 1,035文字
おお、リュシアン。ちょうどお前に言いたいことがあった。
内務省*が乱脈になっているそうじゃないか。もっとしっかり引き締めろ!
*リュシアンは、内務大臣に任命されていた(前話「ジョゼフィーヌの不安」参照)
(むっ)
なんだよ。俺が助けてやったおかげで、クーデターが成功したんだろ?* あの時俺が機転をきかせて、軍隊の前で一発かましてやらなかったら、今頃兄貴は、どうなっていたことか!
*33話「ブリュメールのクーデター」参照
おいおい、フランスは、自由の国になったんだぜ? 自分の結婚に、なんで、兄貴の許可がいるのさ。
いいや、リュシアン。お前にはいずれ、どこかの国の姫君を、だな、
なに、前近代的なこと、言ってんだい! 結婚は、互いの愛がなくちゃな。アレクサンドリーヌは、それはそれはいい女で、俺のことも、よくわかってくれてる。
失礼な! 馬の骨なんかじゃないぞ!
アレクサンドリーヌ・ド・ブレシャン。向こうも再婚でな。銀行家のブレシャンの妻だったんだ。もちろん、夫とは離婚している。
聞き捨てならねえな。
(怒)ジョゼフィーヌだって、お古じゃないか!
兄貴が何と言おうと、もう、結婚しちゃったからな。俺らのことに、口出しするなよ!
ダメだ! 今すぐ離婚しろ! お前には、お前の使命がある!!
(たじたじ)
あの、ですね。ナポレオン義兄さんの言うには、
「ブレシャン夫人とは、即刻離婚せよ」
と。
怒り狂ったリュシアンは、家族を連れ、ローマへ移住してしまった……。
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