第11話 タンプル塔の孤児

文字数 773文字

ウィーン

[オーストリア皇帝フランツ]


戦勝につぐ戦勝、ご苦労だった。

[カール大公]


兄上(皇帝陛下)

(恐縮)

只今戻りました。

うむ……。

ライン方面での勝利の反面、イタリアが思わしくないのは、お前も知っているな。

はい。ボナパルトという若い将軍が、勢いを持っている、と。

フェルディナンドのやつ、情けなくも自分の宮殿に、その男を招いたのだ。我らが育った、あの美しい宮殿に!

(怒)



※皇帝のすぐ下の弟。イタリアのトスカーナ大公。トスカーナは、父のレオポルド2世の所領だった。

ブログ「トスカナ大公フェルディナンド3世」

そうすると、ボナパルトは、すでに、私たちのハプスブルク家と接触を持ったのですね。

そうだ。だが、あの悪魔のような男(ナポレオン)でさえ、お前に一目置いているそうだ。



*「一言の非難も受けない男がここにいる! カール大公だ。その男には魂、素晴らしい心がある。彼は有徳の男だ」(『マリー・テレーズ』スーザン・ネーゲルより抜粋)

ほう……。

あれ(ブオナパルテ)は、コルシカの簒奪者だ。

本当に腹が立つ……。


だが、くだらん話はよそう。

お前の活躍は素晴らしかった。ヨーハンなどは、お前に憧れて、軍務に就いたくらいだ。



*下の弟。

ブログ「ヨーハン大公」

早く一緒に戦いたいものです。

まあ、慌てることもない。今はゆっくり、休むがいい。

皇帝陛下。

(不自由なドイツ語)


あ……。

先客(カール)に気が付く)

(慌てて退出しようとするのを止める)

 

私の話はもう、終わりました。私が下がります。

Non!


(膝を曲げ、優雅なお辞儀)


(退出していく)

兄上、今のは?

ああ、お前はまだ、知らなかったか。

今のが、タンプル塔の孤児だよ。

我々の従妹、マリー・テレーズだ。



*ルイ16世とマリー・アントワネットの娘。アントワネットは、皇帝とカールの叔母に当たる

ブログ「マリー・テレーズ」

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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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