第8話 ナポレオン、最初の結婚
文字数 1,802文字
(傍白)
ボナパルトは、ちっとばかり、人気が出過ぎたからな。イタリアへ行って、手ひどい敗北を喫するか、死んでもらえたら……いやいや。(傍白)
失敗しても、将来の危険人物がいなくなるだけだ。ついでに、この、年増女も……。
それは大丈夫だ。あの男は、年増が好きらしい。60歳をとうに過ぎた元女優※1や、自分の母親と同じくらいの年齢の女性※2に、求婚したこともあったらしいぞ。
※1 元女優のモンタシエ
※2 後のジュノ夫人の母、ペルモン夫人
幸い、君の故郷のマルティニャック島※は、今、イギリスに占領されている。だから、出生証明書が手に入らないといえばいいんだ。あとは、公証人に金を積んで、10歳でも15歳でも、好きなだけ若返らせた事実証明書を書いてもらえばいい。
※ジョゼフィーヌは、フランスの植民地、マルティニャック島で生まれた。
ところでナポレオンもまた、戸籍係の役人の同意をとりつけ、実際の年齢より1歳6ヶ月年長の26歳と申告している。
こうして二人は、同い年カップルとして、めでたく結婚を届け出た。
この結婚は、「世俗の結婚」である。花婿が2時間ほど遅刻してくるというハプニングはあったものの、区長他、証人も、きちんと揃えられていた。