幕間 束の間の平和 ③
文字数 2,384文字
私も、カロリーヌに嫌われているみたいで……。
*ナポレオンの一番下の妹。オルタンスより1歳年下で、ともにカンパン夫人の寄宿舎学校で教育を受けた
この2年前(1800.1.18)、18歳でミュラと結婚している
私と、エジプトからお帰りになったばかりのお兄様まで一緒になって、お義父様に謝って。
だからね、オルタンス。ここは是非、ボアルネ家*とボナパルト家の結束を固める必要があるの。
あなた、ルイ・ボナパルト**と結婚なさい。
*ジョゼフィーヌの先夫の姓
**ナポレオンの弟
(傍白)
なんか、ジョゼフィーヌにこう言えっていわれたんだよな。ま、いい機会だ。デュロックの奴、俺を選ぶか、女(養女だけど!)を選ぶか。こいつがどこまで俺に忠実か、見極めなくちゃな
*4話「トゥーロン包囲戦」参照
軍港で、エジプト遠征出発の際、ナポレオンの船団が出航したのもここ(但し、帰国は極秘だったため、コルシカ経由フレジュス上陸)
(満足)
※
「デュロック! あ、そうだ、私はあの男をも愛している。だがなぜだろう? あの男の性格が好きだからだ。あの男は冷たく、情味がなく、峻厳だ。それにデュロックは決して泣かない!……」
(『ナポレオン言行録』 オクターヴ・オブリ編 [大塚幸男] 岩波書店)
さてと。ルイはもう、貴女にプロポーズしたのかな?*
*『カンパン夫人:フランス革命を生き抜いた首席侍女』イネス・ド・ケルタンギ[ ダコスタ 吉村 花子 訳](表記に揺れあり)
1802年初頭、オルタンスはボナパルトの弟ルイ・ボアルネと結婚した。この結婚は幸せなものでなかったという。
オルタンスは、カンパン夫人(前出)の姪で、自身の友人であるエグレとネイ元帥の幸せな結婚を祝福し、自分の幸せを投影していたと思われる。
どこまでいってもドゼに勝ち目がない気がするのは、気のせいでしょうか。
この束の間の平和の時期に、ボナパルトは
これは皇帝に即位してからのことですが、ナポレオンは、バーデン大公家と縁を結ぼうと思い立ちました。ところが子女が払底し、なんとジョゼフィーヌの先夫の従兄の娘を、一旦養女とし、輿入れさせています(1806.4)。*
(バーデン大公はオルタンスより3歳年下です)
同様の縁組が予見できたのなら、オルタンスとカロリーヌは温存しておいたはずです。ゆえに、第一執政になったばかりの時点では、ナポレオンに王族に成り上がる野望はなかったと、私は評価しています。
*ご興味のある方は、ガスパー・ハウザーのエピソードまで足をお運びください
これについて、素晴らしい考察があります。note の m.A さんの記事です。
ボナパルト家を取り巻く女性たち - オルタンス編≪3≫初恋と結婚
に詳しいですが、ぜひ、冒頭からお読みになることをお勧めします。
ボナパルト家を取り巻く女性たち - オルタンス編≪1≫我慢の子と破れた靴
m.A さんの記事は、宝石やヨーロッパの王室などに彩られた美しい記事ばかりです。せりももの殺伐とした話にお疲れになった際、癒しとなること、請け合いです!