第20話 見せかけの盲従

文字数 829文字


フランスにイタリアを奪われ、健闘したライン方面での戦果も否定され*。


失意のうちに、大公カールは、オーストリアに帰還した。



*レオ―ベン条約及びカンポ・フォルミオ講和条。約16話「タリアメントの戦い」参照

ウィーン。

舞踏会

(青いドレスを着て、楽しそうに踊るマリー・テレーズ*)



*フランスのルイ16世とマリー・アントワネットの娘。タンプル塔から解放され、母の実家のオーストリアに保護された

ブログ「マリー・テレーズ」

[アマーリア(皇帝とカールの妹)]


とても優雅に踊るのね!

[クレメンティーネ(皇帝とカールの妹)]


ええ、とても素敵よ、マリー・テレーズさん。

Merci beaucoup(メルシ・ボク)(ありがとう).


(にっこり)

[カール大公(皇帝の弟)]


おや。フランスの皇女(マリー・テレーズ)はすっかり、我々の宮廷になじんでいるじゃないか……。

(意外)

[密偵]


ああ、それ。

「みせかけの盲従」ってやつですよ。

「見せかけの盲従」?
亡命中の叔父さん*が、そう言って、褒めてました。


オーストリアになじんだと見せかけておいて、実は彼女は、ブルボン王朝再建のことしか考えていません。



*ルイ18世

 ブログ「ルイ18世」


彼女はまだ、ルイ18世とやりとりしていたのか。
ええ。

相変わらず、ルイ18世からは、あなたとではなく、彼の甥・アングレーム公と結婚するようにとの、手紙が届いています。



ブログ「アングレーム公ルイ・アントワーヌ」

ふうん。
彼女も彼女です。


実は、彼女の父上のルイ16世は、ギロチンにかけられる前、密かに、アメリカ公使に財産の一部を託したのです。


ウィーンに来てから、彼女はそれを、こっそり受け取ったのです。



我々、オーストリアの密偵を出し抜いて!

それはすごい!
ちょっと、カール大公! どっちの味方ですか!


その上彼女は、その金を、こっそりフランスからの亡命貴族に送金したんですよ!?



我々の目をかいくぐって!!

素晴らしい。

なんてしっかりした女性なんだ!

…………………………。
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登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

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