第31話 ナポリへの漂流

文字数 890文字

デュマ将軍は、いわれなき罪でナポレオンからエジプトを追い出された。彼を乗せた船は嵐で難破し、イタリア・ナポリへ流れ着いた。



当時ナポリは、混乱のさなかにあった。



デュマは、ひどい環境で、監禁された。それにより、彼の健康は、取り返しのつかないところまで害されてしまった。*



2年後、フランスに帰ることはできたのだが……。




*一説には毒を盛られたとも

ところで、デュマと一緒にエジプトを出航した仲間に、科学者のドロミューがいた。


エジプトで病を得たので、ナポレオンから追い出されたデュマらと同船したのだ。


嵐の為、ドロミューもまた、ナポリへ流されたのだが……。



25話「マルタ島占拠」参照

[ナポレオンに追放されたマルタ騎士]


ああっ!

裏切り者のドロミューだ!

[科学者ドロミュー]


げげっ!

マルタ騎士!

お前、よくも大嘘をこきやがって……。

お前を信じたばかりに、俺らマルタ騎士は、何の権利もないままに、島から、追い出されたんだぞ!

[ドロミュー]


ちっ、違う!

本当にナポレオンは言ったんだ! 上陸させてくれたら、マルタ騎士の権利は保証するって!

嘘つけ!

フランス軍が上陸して、ほんの数日で、俺らマルタ騎士は、丸裸で島から追い出された!

信じてくれ!

古い友人を裏切るつもりなんてなかった!

俺も、ナポレオンに騙されたんだ!

信じられるものか!

ナポレオンの下で、いい思いをしているくせに!


ドロミューは、デュマ将軍らからも引き離され、ひとり、シチリア島へ移された。



*デュマ将軍は、同じ船でエジプトを出航した、マンスクール将軍と同じ監獄に監禁されていた

[各国の科学者たち]


なんてことだ!

ドロミューのように高名な科学者を監禁するなんて!

科学界に対する冒とくだ!

[イギリスの科学者たち]


我々イギリスは、フランスの敵だ。

だが、ドロミューの監禁には、憂慮を表明する。彼の不在は、ヨーロッパ全体の損失である。

[マルタ騎士]


知ったことかよ。

裏切り者には、当然の報いだ。

殺されなかっただけ、ありがたく思え!


ドロミューが監禁されたシチリアの独房は、湿気が多く、より劣悪な環境だった……。



※詳細はブログ「デュマとクレベールの帰国 1」〜


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

オーストリア皇帝フランツ


神聖ローマ帝国最後の皇帝でもある。

くそまじめで、四角四面な性格。

ロシア皇帝アレクサンドル1世


父パーヴェルの暗殺に関与または黙認し、即位した。

欧州の平和は自分が守る、と、固く心に誓う「騎士」。

フランス皇帝ナポレオン


あ、最後になっちゃった……。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色