ライバル企業

文字数 744文字

 ここ最近は閻魔庁の仕事ばかりで、どうにも造りたいものが造れない。ライバル企業も増えてきたこともある。
 家庭用製品は、不実・凍死場・目立・僧二位といった大手にとられつつある。また通信関係は、何処喪・影幽・柔銀の寡占状態になって、もはや居場所が無い。
 「そろそろ潮時かな?」
 そんなことを考えていると、
 「不実からデータ流出。」
 「凍死場の原始力事業失敗。」
 「柔銀、大赤字。」
 というニュースが飛び込んできた。

 そもそも、不誠実な連中に極秘情報を渡したり、需要の無い体力だけの原始力普及にも無理があった。大妖狐発電も自由価格になった。中小企業が大企業の目を盗んで、細々と生きていくのも厳しいご時勢。
 特許なんて保護措置もない。もっとも、あの世の連中は物づくりよりカジノのような賭博場経営のほうが熾烈だ。かれらは何も生み出さない。ただ、現世から送られる火葬通貨をぐるぐると回しているだけ。そんな連中は、役人たちに賄賂を渡すが、ほとんど捕まって罪を重ねていくだけ。
 「後継者を育てる必要も無いし、何かもっと違うことがしたい。」
 そんなことを考えていると、
 「社長大変だ。今、閻魔の元に天国から商品を売り込みに来ているらしい。」
 社員の死神が血相を変えて飛び込んできた。死神はドクロだから表情が無いと思っていたが、若干青ざめているように見えた。
 「イエズス会のザビエルってのがやってきて、色々な品物を売り込もうとしている。」
 地獄も洋装への変化が出始めている。そして、帯に代わる天国バンド。車を引く鬼に代わる、極ラクダ。極めつけは、天国のオール電化の波が地獄にも押し寄せようとしていた。エコからの脱却。それは、会社の方針と正反対であり、存続に関わる問題だった。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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