マー・メイド号

エピソード文字数 683文字

 豪華客船のルート申請をしたら意外とすんなり通ってしまった。地獄から極楽までのクルーズ。
 「極楽の人気が無くて、もう地獄の定員が一杯。増設しても間に合わない。これで、少しでも極楽人気が出てくれれば。」
 どうやら、閻魔たちも極楽の過疎化に困っていたようだ。
 「で、船の動力は?」
 役人に問われて、俺は意気揚々と答えた。
 「川に住む大蛇に引いてもらう。報酬は酒。」

 船のオーナーは雪女。だから、酒は売るほどある。女性らしい名前ということで、マー・メイド号と名付けられた。船内のバーは飲み放題。
 一部地上も通る。群馬などいくつかある三途川に船着場を設ける。なので、金さえ払えば地上からも乗ることもできる。生者たちは、本物のあの世とは思わず、クルージングを楽しむ。クルーたち鬼どももキャストの仮装だと信じているようだ。
 「極楽も悪くないな。」
 そう思うかもしれない。が、実際にはただ毎日座っているだけの退屈なところなんだが。そのあたりは、補助金をもらうために多少脚色する。
 「罪状はみんな違っても、地獄と極楽同じ。・・・冥界は広い。あの世は同じ。輪廻は回る。」
 テーマ曲、イッツ・アナザー・ワールドに乗せて、各地を巡る。

 船には劇場がある。マッキー・シアター。あの世のPRが夜な夜な繰り広げられる。末期船長と冥王プルート、鳥の格好をしたドナルド・ガンなどのキャラクターが活躍する。内容によっては、チップがうんと出ることもある。客たちは、ショーに飽きるとバーに行って自由に酒を飲んでいる。
 「あら?ジンのカクテルね。航海中の期間限定ですって。」
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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