ジジババと40人の眷属

エピソード文字数 681文字

 「今回のお見送りオプションには40名の方が参加されております。このオプションでは絶対に声を出してはいけません。皆さんは酒樽の中に入ってください。覗き窓があるでしょ。ふたをしますからね。」
 川のそばで樽の中から様子を伺っていると、一匹の鬼を先頭に死に装束の一行が小舟で川を渡ってくる。
 岸に下りた一行は樽の近くの川原を一列になって進んでいく。
 「さっさと、歩け。年寄りは足が遅くていかん。」
 鬼は、後をついてくる老人達に叫ぶ。樽のなかに隠れた連中は、亡くなったばかりの身内が列にいるはずだと探す。

 「ぷう。」
 突然、樽の中から、音がした。
 「なにやら臭うな。」
 亡者を引き連れていた獄卒が気付いて、音のした樽に近づいてきた。
 「酒樽があるな。ちょうどのどが渇いていたんだ。一杯飲んでいくか。」
 樽の中では、若者が困っていた。焦れば焦るほど汗が出る。緊張のためか、トイレにもいきたくなってきた。
 「穴が開いてるな。ちょっと舐めてみるかな。」
 鬼は樽の穴に指を突っ込んだ。指につめたい感触があった。引き上げると、黄色い液体がたれる。
 「不思議な香りがするが、もしやウイスキーとかいう外国の酒か?」
 鬼は指を舐めた。
 「ぺっ!腐ってやがる。」
 鼻をつくような異臭に、鬼は吐き出した。そして、名残惜しそうに何度も振り返りながら亡者と共に去っていった。

 「大丈夫でしたか。」
 添乗員が樽を開ける。あたりに、アンモニア臭が広がった。
 「はは、あまりの怖さにちびっちゃいました。」
 樽の主は、隠れたまま恥ずかしそうに小声で答えた。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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