霊蔵庫

エピソード文字数 805文字

 氷なら極寒地獄に山ほどある。鬼どもに運ばせれば無尽蔵に集められる。さっそく巨大な木箱を作って氷を入れた。数日放っておいたら湿度が高くて、内側がふやけている。竹を割いて張り付ける。竹の皮が水をはじいてくれる。おまけに板と竹の間に空気の層ができて保温効果が高まり、いい感じになった。霊蔵庫。新製品の名前だ。

「はい、しばらくこの中で休んでください。」
 死神が連れてきた霊を箱の中に入れた。霊たちはとくに寒がっている様子もない。ただ、低温になると活動が鈍り、動かなくなった。

 翌朝、出社してみると事務所の中は散乱していた。箱の中にいたはずの霊が、抜け出して好き勝手に暴れまわっていたようだ。
「霊だから閉じ込められないのか。」
 せっかく作った、霊蔵庫だが閉じ込めておけななければ邪魔なだけだ。どうやら、霊たちが動き出したのは氷が思ったより早く溶け切ってしまったからだった。地獄の氷は地上では長持ちしなかった。

「死神。こいつを処分してきてくれ。」
 俺は、死神に霊蔵庫を渡した。彼は、そいつをどこかへ持ち去った。地獄は広い。適当に捨ててくるだろう。

 数日後、
「霊蔵庫、友人が欲しいというのでやってきました。うかつに捨てれば不法投棄になるとこでした。」
 死神は嬉々として語りだした。聞くと、雪女が引き取ったという。暑いところが苦手なやつなので、住まいにでもするきなのだろうか?
 その後、俺は地獄である噂を耳にした。灼熱地獄で冷酒やワインを売り出したというのだ。
「雪女が引き取った霊蔵庫に氷と酒を入れて店を出したんですよ。いやあ、繁盛してましたね。1時間待ちはざらです。極寒地獄で仕込んだ酒はうまいですからね。」

 ちっ!しくじったか。
「あ、喜んでください。雪女が個人向けの小型の霊蔵庫がほしいそうです。店頭販売だけでは限度があるので、酒の通販をするのに使いたいそうです。いいやつでしょ。」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み