平和な地獄

エピソード文字数 616文字

 「いやあ、日本の地獄は実にのどかで平和ですな。」
 海外の地獄からの視察団一行だ。今回は治水がテーマなので、添乗員を命ぜられてしまった。
 「うちのところは、テロリストだらけ。」
 「こっちも、コウモリたちのデモで荒れてますよ。」
 「カッパをお貸ししましょうか?」
 確かに、日本人ほど従順な民族もいないだろう。反面、他の地獄からの移民も受けない。
 「南米のほうでは、毎晩パーティーをしている国もありますよ。」
 向こうは現世が地獄だから。
 「地獄門を閉じて壁を作る計画がありますが、今は中国の進出に、魔王様がお怒りです。」
 「かれらの自獄は手狭で、どんどん輸出してますからな。ところでロシアとの通路はどうなってます。」
 「ロシア門は極秘事項です。」
 アメリカからの視察は小声になった。

 今、世界的に問題なのはAIに地獄が必要かという話題だ。
 「AIの判断に従っただけという連中もじきに出てきますからな。罪の意識が無い連中は裁けないでしょ。」
 「すでに、事故の責任を車に押し付けようとしている者がいますし。本来は自己責任なんですけどね。歳を理由に投獄をまぬがれようとしているらしいです。」
 「こちらに来れば年齢制限はありませんので、煉獄で再教育を予定しています。かなり手狭になってきてますけど。」
 役人たちも頭を抱えている。治水よりも治安のことで頭が一杯の様子だった。本物の沼より、よっぽど泥沼なようだ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み