運動会

エピソード文字数 1,076文字

 川の中流に沼がぽつんぽつんと出来てきた。
 「こんな、沼地、使い道があるのかねえ。」
 出来上がるにつれ、見学にきた鬼や河童がやってくる。

 「心配は要らない。地獄のことなら安倍ちゃんにまかせておけばいい。ちなみに、おなじ苗字でもまもなくやってくるやつは、かなりの枚数の舌を持っているとの噂だ。いまから抜くのが楽しみだわい。」
 閻魔は高笑いをするだけだった。閻魔がちゃんづけで呼ぶなんて、清明ぐらいなもんだろう。

 しばらくすると、なにやらうごめくものが沼地に住み着き始めた。動物のようにも見えない。三途の川は地獄ではないから昼夜がある。とくに夜になると、何者かが騒いでいる。そっと近づいてみると、色々な種類の妖怪がいた。沼地を好む、田坊主に大なまず。現代の家には住めなくなったべとべとや赤舐め。そういった連中が走り回っていた。
 「最近は墓場もマンション化しちまって、運動会の場所に困っていたんだ。」
 いつの間にか、背後からぬらりひょんが話しかけてきた。
 妖怪たちは沼地の管理を自主的にやってくれた。お陰で、三途の川は水が途切れたり、氾濫する心配がなくなった。

 一つ目による目玉ころがし
 鎌イタチの刈り者競争
 子泣き爺のおんぶ競争
 河童相撲
 ゆきんこ我慢大会
 ぬりかべ障害物競走
 からかさと呼子の二人一脚
 火の玉入れ
 のっぺらぼうの福笑い
 ジェットババアたちの徒競走

 応援合戦もある。
 だいだらぼっちの一人パフォーマンス『妖怪ボッチ』
 狐たちによる『港の妖狐、横浜、遣すか?』
 火車は『我が家の家系は火の車』

 売店もある。
 からす天狗の『からしレンコン』
 小豆洗いのパーラーでは『タピオカ風小豆入りドリンク』
 玉藻の『たまごかけごはん』
 砂かけの『ふりかけ』

 砂かけの店先でトラブルが起こった。持ち帰りと言いながら、白飯にこっそりかけて店内で食べていた客がいたようだ。追加料金をめぐって言い争っている。かけた、かけないの水掛け論。
 「どっちも、一旦、揉めんとこ。」
 と、いったんもめんが仲裁にはいる。すぐに尻舐めが、ハンケツを下す。

 仮装行列『きつねの嫁入り』が始まった。みなあわてて避難する。雨が降ってきたからだ。
 最後に全員行進『百鬼夜行』

 沼地での運動会は面白くて、すっかりはまってしまった。清明が池はだめだといったわけがやっと解った。
 「ちょくちょく、運動会を見に行っているそうじゃありませんか。はまりすぎて、溺れないでください。」
 閻魔庁の役人から忠告された。
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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