酒樽庁

文字数 625文字

 鬼どもは酒好きだ。和飲など外からの酒が増えてくるに従い計量を統一する必要がでた。そこで、閻魔庁とは別に、酒樽庁(さかだるちょう)が新設された。

 酒は樽で管理される。地下深くの地獄は温度変化が少なく、酒の貯蔵にはもってこいだった。
 「輸入酒には保管税をとろう。」
 極楽には酒が無いので茶蔵(ちゃくら)というのがある。茶徳税というのがあって、いいお茶には徳があるというので、質の悪い茶を売る悪徳業者が現れた。そこで取締りのため税をかけるようなった。
 地獄も酒の質を守るために、保管税を導入し酒樽庁の査察も行なった。保護的管税と揶揄するものもいたが、保存的管理税のお陰で酒造市場は守られた。

 「酒樽庁の査察よ。」
 偽和飲が出回っているというので、雪女の酒蔵に調査が来たのだ。
 「これ、和飲よね。」
 「それは血の池ワインといって、前からずーと売ってたもので、まったくの別物。」
 雪女は必死に説明する。が、申請がされてなく、まぎらわしいということで、改善命令が出された。
 「これからラベルを作り直したりすれば大赤字。なにかいいほうほうないかしら?」
 急に相談されても困る。
 「ワイ~ンとかにしたら?」
 「見た目が悪いじゃない。」
 「じゃあ、ワイジとか。」
 「なんだかわからないでしょ。」

 「ヒック。」
 真っ赤な顔で死神がやってきた。
 「ちょっと、憂い好きってやつ試飲したらこの有様で。」

 ワインでもウイスキでもない。ウイン。無事申請も通り、販売も再開された。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み