あこがれの社長生活

エピソード文字数 742文字

「このままでは、ヘル・ゲイツ計画が頓挫してしまう。」
 家の中であれこれ悩んでいると、
「はい、みなさんここでちょっと休憩です。」
 監視の死神が、たくさんの霊をつれてやってきた。

「ここは、休憩所じゃないんだぞ。」
 俺は少々いらいつていた。
「あなたの監視のために、仕事が遅れてまして。この仕事、自然相手のところがありますから不安定なんですよ。」
 おいおい、もとはお前がぶつかったからだろう。

「さあ、霊は鮮度が命です。賽の河原までもう一がんばりですよ。」
 一行は去った。一人残された俺は、
「あいつも働いてるんだ。」
 そう思うと、少しうらやましくなった。いまなら定年で会社ロスになる連中の気持ちがわかる。

「そうだ。会社を作ろう。まずは、営業だ。あいつにさせよう。」
 死神に営業させるには、顧客は死神だ。鮮度が大事だって言ってたな。

 困ったときは、田舎に行こう。実家の古い母屋の中は、まるで昭和の製品の展示場のようだ。使えなくなった家電や、生活道具が詰め込まれている。
「もったいないし、近頃は処分に金がかかるから。」
 土地があるからなのか、それとも貧乏根性からなのか昔の人は使えないものを後生大事にとっておくものだ。
 鮮度を保つには冷蔵庫がいいが、専用のガスやモータのエネルギー源の問題がある。物置の散乱した荷物の中を突き進んでいくと小さなタンスのような箱が目に入った。
「これは、めずらしい。氷冷庫ですね。社長。」
 同行の死神が解説した。う~ん、社長。いい響きだ。
「いまの冷蔵庫ができるまえには、この中に氷をいれて食料を冷蔵していたものです。氷一個で数日は持ちます。いやあ懐かしいですな。いまでも、寿司屋などでは魚の冷蔵に使っているらしいですよ。」
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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