冬眠

エピソード文字数 643文字

 冬になると、霊たちはあまり活動しなくなる。これを冬眠と呼んでいる。しかし、一部の妖怪、とくに雪女にとっては最高のバカンスシーズン。冬将軍にくっついて旅を満喫しているらしい。
 また、夏に暴れまわっていた竜神は休息に入るが、入れ替わるように、その子供たちが表に出てくる。コタツ。人間が寝込んでしまうのは、こいつらの仕業だ。で、春になると一斉にタビダツとなって天へ昇っていく。

 ところが、行き場の無い俺にとっては、地上に留まるほかはない。そこで、自然とそんな無眠の霊たちの集まる谷が最近できた。無眠谷(むみんだに)。普段は、夢を食べるという白いバクたちが暮している。かれらが、冬眠に入ると、そこに、ふわふわとした白い連中がひょろひょろと列をなしてやってくる。雪に閉ざされたこの谷の名物がかまくらである。霊たちは地上であぶれたコタツを連れてのんびりと、ここで過ごす。
 いざ、かまくら!
 そうして、冬を越した彼らが帰るとようやくバクたちが起きてくる。

 たまに、大きな音がしてかまくらがひっくり返っていることがある。
 「夏の間、朝起きたら向きが変わっていたってことあるでしょう。それが妖怪まくら返しってやろうの仕業。冬になると行き場が無い腹いせにやるんですよ。かまくら返し。」
 常連が教えてくれた。
「春の雪解けのときも見ものですよ。一斉に解けた雪が、かまくらを押し流し、滝となって落ちてくる。これが、かまくら瀑布です。ちなみに、さかのぼっていくと源は寄居ともいわれています。」
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登場人物紹介

主人公

地獄で入獄拒否され残りの人生を霊として過ごす

主人公を保護観察する死神

雪女。

居酒屋雪ん子の女将。

死神の知り合い。

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